こんにちは。「天気のヒミツ」連載の気象予報士 伊藤みゆきです。
11月初めに日光や秩父で見た紅葉は例年にない美しさでした。
一方で、11月半ばに山口市を訪ねた時「いつもはもっとキレイなのよ。一時期、色づきが進んだと思ったら、そのあとが遅くてね」と説明を受けました。
確かに、都内でも早い段階で色づいたケヤキやサクラの紅葉は美しかったですが、11月半ばからのイチョウやモミジの色づきにはばらつきが出ているように感じます。
この原因の1つが「10月のままで足踏み状態の気温」です。
今年の10月は気温が平年並みかやや低く、日照時間は長くて雨が少ないという「紅葉には絶好の気象条件」だったのです。日光の紅葉はこのおかげで美しかったのでしょう。
ところが11月は、初めこそ冷え込んだものの、その後は暖かく経過しています。11月中旬までの気温は「10月並み」の所がほとんどです。
特に西の方ほど季節の歩みが遅くなっています。
北海道や東北地方には何度か寒気が流れ込みましたが、その寒気は西の方まで及ばないまま弱まってしまうのです。
例年11月になると、天気図には冬型の気圧配置がたびたび登場し、「太平洋側は晴れても寒い」「日本海側は、曇り空で時々雨」「山は雪」という日が増えてきます。
今年はこの傾向が当てはまらず、晴れ→曇り→雨が短い周期で変化しています。このため太平洋側を中心に陽射しが少なく、朝の冷え込みが弱くなっています。雨で葉が痛み、落葉も進み「紅葉には残念な気象条件」となり、11月半ば~12月初めに見ごろを迎える地域では、紅葉が遅れたり、一斉に色づくのが難しくなっているようです。
ただ、不揃いの紅葉は、雨の日ほど美しく目に映るように感じます。
晴れている日は、枝に残っている茶色い葉っぱがカサカサしてしまい、緑や赤のみずみずしい葉っぱとのギャップが大きくなってしまいますが、雨の日は見ごろを終えた葉っぱも濡れて、木全体に潤いの統一感が生まれます。この先も晴天は続かず「紅葉狩りにはあいにくの天気」が多い予想ですが、逆に思わぬ美しさに出会えるかもしれません。足元は滑りやすいので気を付けてくださいね。