「日本の女性の社会進出の問題は、報道などでよく聞いていた。でも実際に日本に行って、その現状を知り、驚いた」

 トルコのEU担当省で働くソナイ(33歳)はこう話す。ソナイは、ハーバードケネディスクールの学生で、約20カ国55人と共に、今年の3月、初めて日本を訪れた。

ソナイが見た「女性の社会進出」日本の現状

 約100カ国の学生が通うケネディスクールの特徴の一つは、春休みに行われる各国へのスタディーツアーだ。自国の政治・経済・観光を紹介すべく、学生が企画するツアーには、イスラエル、パレスチナ、キューバ、北朝鮮など、なかなか訪れる機会がない国・地域も多い。そして今年の日本へのスタディーツアーの参加者として、ソナイは3月に日本を訪れ、安倍首相、遠藤オリンピック・パラリンピック大臣はじめ多くの政策決定者や企業を訪問した。

安倍首相と握手するソナイ
安倍首相と握手するソナイ

 参加者だけでなく、主催者側の私たちにとっても、日本の現状を各国の多様な視点を通して再認識する貴重な機会だった。このツアーに参加したソナイは、日本の「女性の社会進出」の問題に大変興味を持ったという。

 「世界第3位の経済大国の日本で、なぜ女性の社会進出や男女平等がこれほど遅れているのか。しかも少子高齢化の中、経済を維持するには女性を労働人口に組み込まなければならないことは明らか。誰がみても、“望ましいこと”というより“必要不可欠なこと”なのに、なぜ進まないのか? とても不思議に思う

トルコの職場は半分以上が女性

 トルコも、男女平等に関しては、世界経済フォーラムの男女格差指数等を見ると決して進んでいるとは言えない国の一つだ。それでもソナイ自身はこれまで、トルコで多くの女性のロールモデルに巡り合えてきたという。

 「まず、母が家庭と仕事を両立している女性だった。今働いているEU省の職員も56%が女性。大臣直属の次官補にも、家庭と仕事を両立している素晴らしい女性がいた。身近なロールモデルがいるから、“自分だってできる”と確信して頑張れる」

ソナイは、EUの担当省でメディア担当などを歴任してきた
ソナイは、EUの担当省でメディア担当などを歴任してきた

 その一方で、日本で安倍首相面会のため官邸を訪れたとき、彼女は女性職員の少なさに驚いたという。

 「安倍首相も女性の社会進出を訴えていて、その意思の強さと総理のリーダーシップを間近で感じた。ただ、国家のトップを囲む職員を見渡したとき、男性ばかりだった。官邸にいた時間は短かったけれど、女性にほとんど会わなかったことに思わず気づくほど、男性が多かった。なぜ日本で女性進出が遅れているのか、その問題の深さを少し理解できた瞬間だった

 私たちスタディーツアー主催者側としても、学生達が面会する日本人の男女比を考慮したつもりだったが、ソナイのように、「男性ばかり」の印象を持った学生は多かったようだ。

 「例えばケネディスクールのOBOG会でも、来賓の挨拶をしてくれた方々は全員、男性。司会も男性。大臣や議員の先生方はじめ、素晴らしい活躍をされている方々に会えて光栄だったけど、女性の少なさにここでも驚いた」と彼女はいう。