日本では男女が平等でないことへの自覚がない?

 この指摘に対して、「日本人女性のハーバード卒業生が少ないからね」と私は返答したものの、ハッとさせられた。私自身、女性が少ない環境を格別不思議とも思わず、ソナイに言われるまではその状況に問題があると考えもしなかったからだ。

 今回のスタディーツアーで、AsMama 甲田恵子さん、コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン 鎌田華乃子さん、アーツブリッジ 伊藤美歩さんと「女性の社会進出」についてのパネルディスカッションを行なった。その中で、日本では男女が決して平等でないことを人々が自覚していないことが、解決の一つの壁として挙げられていたが、自分自身も「気づかない」「自覚がない」人の一人だということに、ソナイの指摘で認識させられた。

スタディツアーで講演を聞く学生たち
スタディツアーで講演を聞く学生たち

 ソナイは、「女性たち自身が現実をただそのまま受け止めず、声を挙げていかないと解決は進まない」と話す。政府がトップダウンで、政策で方向性を示すことは大事だが、それと同時に市民社会からボトムアップでの動きがないと、状況は変わりにくいという。

「次世代の女性たちがより自由に、より幸せに生きられるように女性自身がもっと声を上げるべき」とソナイは言う
「次世代の女性たちがより自由に、より幸せに生きられるように女性自身がもっと声を上げるべき」とソナイは言う

 「私たちの世代の女性がまずは団結して、必要な価値観や制度を訴えることから始めないと、将来の世代の女性は同じ問題に直面する。米国のマデレーン・オルブライト元国務長官が最近“助け合わない女性には、地獄が待っている”と言ったけれど、その発言はもっともだと思う。次世代の女性がより自由により幸せに生きられるように、女性同士が自分たちの行動や選択に自覚を持って、力を合わせて生きていかなければならない」

女性の社会進出は、私たちが語るべきトピック

 確かに日本では、「女性の社会進出」を発信するのは、政治家などその問題に専門的に関わっている人が多い。私も友人とこの問題についてよく話し、どうすれば家庭と仕事を両立できるのか一緒に悩みを共有するものの、それを社会運動として展開、発信するという発想は今でもない。どこか、そういう活動は「フェミニスト」が行うもので、「ふつうの女性」がすることではないという偏見が自分の中にあるのかもしれない。

 それでも待機児童や保育所不足は切実な問題として市民社会からの要求が強く出されるなど、日本でもボトムアップの力で「問題への認識」がまず生まれ、現状が少しずつ改善されつつあると感じる。自分はどう行動し、社会との関わりの中で仕事をしていくべきなのか、ソナイと話すことで改めて考えさせられた。長い道のりではあるが、一人一人の行動の積み重ねが将来の「女性の社会進出」を後押しすると信じたい。

文/大倉瑤子

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