ハーバードの卒業式の演説のスピーカーは、フェイスブック創業者のマーク・ザッカ―バーグ氏だった。

 ザッカーバーグ氏は30分のスピーチの中で、自分の人生の目的(purpose)を創り出すだけでは不十分で、他人のためにも目的を創り出す重要性を、卒業生に説いた。

卒業式では、ハーバード大学を中退したマーク・ザッカ―バーグ氏に、名誉博士号が贈られた
卒業式では、ハーバード大学を中退したマーク・ザッカ―バーグ氏に、名誉博士号が贈られた

 世界では格差がどんどん広がり、機会の不平等が深刻化している。日本も例外ではない。そんな世の中で、自分のためだけではなく、社会のために目的を創り出すためには、やはり、自分の今の世界観を越えて、相手の立場になって考えることが重要なのだろう。

ハーバード初の女性学長が残したメッセージ

 2007年から学長を務めたファウスト学長も今年で「卒業」することが先日、発表された。退任を伝える発表で、彼女はハーバードへ以下のメッセージを残している。

ハーバード初の女性学長を務めた、ドリュー・ファウスト氏 (C) Art Poskanzer
ハーバード初の女性学長を務めた、ドリュー・ファウスト氏 (C) Art Poskanzer
May Harvard be as wise as it is smart,
as restless as it is proud,
as bold as it is thoughtful,
as new as it is old,
as good as it is great.

優秀なほど、賢明であれ
誇り高く、たゆまずにあれ
思慮深く、そして大胆であれ
伝統を重んじ、革新的であれ
偉大で、そして善良であれ
ここハーバードで多くの学生が学んだ「自分の今の世界観を越えて、相手の立場になって考えること」
ここハーバードで多くの学生が学んだ「自分の今の世界観を越えて、相手の立場になって考えること」

 1世紀前は、ファウスト学長のような女性がハーバードのトップに立つことが想像できなかったように、今の世の中は何が起きるか分からない。ポジティブに捉えると、可能性に満ちあふれている。彼女が残したメッセージを胸に、自分の芯を持ちながらも寛容で謙虚に、成長し続ける人でありたいと思いながら、ハーバードを後にした。

 この連載は今回で最終回になります。約2年にわたりご愛読いただいた読者の皆さん、本当にありがとうございました。

文/大倉瑶子 写真/大倉瑶子、Jessica Scranton、Art Poskanzer