向山さんが下した決断は人生観を変えることに……

 単身でカナダに駐在し、遠距離の夫婦生活を送る中で、仕事が大変なときに心の支えになるのは家族だと実感した。また、現地で仕事と家庭を両立する管理職の女性たちに出会い、多様なライフスタイルを見たことで、向山さんの気持ちは揺れていた。

 「ただ、自分のカナダ駐在は、“帰国したらこんなことをやってほしい”という日本の上司や同僚の期待を背負って出してもらったと自負していた。それを自分の都合で“寄り道”するのは無責任なんじゃないか。自分は仕事が好きだし、評価されたいという気持ちもある……と、何度も悩んだ」

単身でカナダに駐在していたころの向山さん。仕事にやりがいもあり、会社の期待に応えたい気持ちがあった
単身でカナダに駐在していたころの向山さん。仕事にやりがいもあり、会社の期待に応えたい気持ちがあった

 正解がない中、向山さんは一旦仕事を辞めて夫の留学に同行すると決めた。決断できたのは、意外にも会社のおかげだったという。

 「最後に背中を押してくれたのは、理解ある上司たちと会社の再雇用制度。長期的な視野で、今の私の状況に理解を示し、協力してくれた」

 向山さんが勤める大手商社には休職制度はないが、配偶者の海外転勤に伴う退職の場合には、退職しても3年以内なら再雇用を検討する「再雇用制度」がある。向山さんはこの制度を活用し、一旦退職をして1年間、夫と共にボストンで暮らすことにしたのだ。

 後半は来週に続く

文/大倉瑶子

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