「意見を言う」よりも大切なことがある

 日本では留学の学びとして、「自己主張の大切さ」「自分の意見を人前ではっきり言う」が挙げられることが多い。

米国大統領選の初のテレビ討論をキャンパスに集まって観る学生たち

 確かに、ハーバード・ケネディ・スクールでも、成績の半分近くがclass participation(授業への参加の度合い)で構成される授業もある。いい成績を得るためのインセンティブになっているうえ、教授 → 学生だけでなく、学生同士、学生 → 教授と、教室にいる人全員が学びに貢献するべきという考え方だ。

 私自身、多種多様のキャリアを持つ世界中の学生がそれぞれの考えや意見を交換する授業で、新たな考え方や発見に出会うことが多かった。例えば、とある医療政策を分析するときに、政治家、公務員、医者、労働組合、医療関連NGOなど、様々なバックグラウンドを持つ学生がいると、彼らの意見を聞くことでその政策への理解を深めることができた。したがって、多くの日本人は「頑張って意見を言えるようになった」ことを留学の成果として持ち帰ることが多い。

 しかし、意外にも教授たちが強調するのは、自分の意見を言うことではない。「人の意見を聞き、相手の立場に立って考える」ことだ。

 交渉、事業評価&モニタリング、ユーザー調査、パブリック・スピーキングなど様々な授業を受けてきたが、一貫してその重要性を叩き込まれた。自分が思っていることを発言するより、異なる意見に耳を傾けて、なぜそう思うのかを考えて、理解する方が大変だからだ。