発言を控えて他の意見を待って

 去年のマネージメントの授業では、学期半ばに、教授からそれぞれの生徒に授業への参加に対するフィードバックが与えられた。中には率先して発言する生徒に対して、「参加を少し控えて、他の人の意見を待ちましょう」というコメントもあったことに、私は驚いた。

 これまで、どんどん発言することが推奨されて、評価をされてきた人も多いため、クラスメートの中には少し不満をこぼす人もいた。しかし、教授は「クラスメートの中には、英語が母国語ではない人も多い。考えをまとめて、発言するまでに少し時間がかかるかもしれない。自分はもう数回発言をしていたら、一歩引いて周りの人から学ぶ姿勢も重要だ」と説明した。

ハーバードの大教室の授業風景
ハーバードの大教室の授業風景

 ハーバードでの授業では、教授が多様な学生のバックグラウンドをくみ取ったうえで、いかに学びを最大化できるか、授業のファシリテーション(活用)能力が求められている。さらに学びを最大化するためにも、教授は、最初の授業でNORMS(規範)を設定することも多い。

「授業で話した内容は門外不出」

「建設的な議論をするために、DISAGREE(反対)することを恐れない」

「DISAGREEするときは相手への敬意を忘れない」

「意見を言う際、新しい視点を提供する」

などだ。

 小学生でもあるまいし、と思うかもしれないが、全員が同じ意識で授業に取り組むことを明確化するためには非常に重要だと感じている。例えば、このようなNORMSがあると、反対意見を言うときに、言い方にさらに気を遣うほか、受け手も攻撃されていると身構えずに、しっかりとその意見に耳を傾けられる。