日本でも、女性登用・活躍が安倍政権の成長戦略の柱として打ち出されてから、多くの企業がダイバーシティ推進室を設置し、女性社員向け研修プログラムを実施するなどして莫大な資金を投入している。果たしてこれらのプログラムは、女性登用・活躍促進に効果的なのだろうか。例えば人事部は、採用においてダイバーシティ(多様性)を推進し、研修に参加した女性社員のキャリアに対する不安を取り除くことができているだろうか。

ダイバーシティ推進プログラム 結果は検証されていない

 ハーバード大学の調査によると、このようなダイバーシティ推進プログラムの多くは、そもそも効果が検証されていない。投資をした結果、目的を果たしているかどうか、分からないままになっているのだ。

 ボネット教授が提唱するのは、組織に「行動経済学のデザイン」を組み込むことだ。

ハーバードで大人気の「組織のための行動経済学」の授業を行うボネット教授(C)Women and Public Policy Program 
ハーバードで大人気の「組織のための行動経済学」の授業を行うボネット教授(C)Women and Public Policy Program 

 一人一人の価値観を変えるのには、世代交代を待たないと果たされないことが多い。女性登用の問題だと、「女性は子供を産んだら家庭を優先させるべき」「女性はすぐに仕事をやめてしまう」という価値観は、過去の経験や長年の社会の慣習によって構築されてきた考えのため、根本的に変えるのは難しい。

 しかし、行動経済学を利用すると、組織のデザインそのものを改革できると、ボネット教授は強調する。

 行動経済学を活用した組織のデザイン改革とは一体何なのか。

 ここに面白い事例がある。