中途半端がときに強みになる!?

 また、少しずつ専門知識を得ることで思わぬ効果もありました。専門知識を深めていくうちに陥りがちな「スノッブの罠」にはまらずに済んだのです。

 上流気取りで通ぶるような人たちをスノッブ(snob)ということがありますよね。知識を得れば得るほど、上から目線になってしまいがちな人がたまにいます。例えば私が見てきた人の例で言えば、ワインを知り始めフランスのブルゴーニュやボルドー地方など高級なワインにはまると、コンビニでも買えるようなワインを少しばかにし、ワインに氷を入れて飲む人をかわいそうという目で見たりすることも……。

 日本酒を深く学んだ人の中には「純米酒至上主義」にはまり、純米酒以外は日本酒じゃないと楽しく飲んでいる人を見下す人もいました。

 このような経験から、深く知ることでかえって偏見にとらわれて周りの意見を聞けなくなってしまう危険性もあると感じたのです。知識を積み重ね、自分の主義として持っていること自体を否定はしません。しかし、学べば学ぶほど、そもそも何のために勉強し始めたのかを忘れ、知識の習得にだけ走ってしまう危険性もあるのです。学び始めたころの新鮮な驚きがなくなることで、普通の人の感覚と少しずれてきてしまうのかもしれません。

 私は中途半端にいろんなことに足をつっこみ、毎回新しいことを学ぶ経験があったお陰で、素直に物事を見る目を養うことができたのではないかと思います。一つの資格にのめり込まずに、広く浅く学んだため、コミュニティの中にどっぷり浸かってタコツボ化せずにすみました。当時は広く浅く学んだことが「薄っぺらいのではないか」とコンプレックスに感じたこともありましたが、今思うとそれも悪くないな、と思います。

 新しい知識を得るときは誰もが必ず素人です。素人は分からないことを分からないと正直に口にすることができますし、新しい知識がどんどん蓄積されることの楽しさをダイレクトに味わうことができます。多くの資格取得の勉強をする過程で、分からないことが分かっていく面白さ、分からないと言っていい安心感を得ることができました。

選択肢が多い時代に発信しないのはもったいない

 素人目線で、分からなくてもいいから自分の知識や考えを外に発信することは、経験がない人にとっては、とても怖いことでもあります。でも、何も言わなければ、何も伝わらないのです。「誰も自分のことを分かってくれない!」と嘆く前に、自分の気持ちを分かってもらえるようにしっかりと伝えてみましょう。

 怖さを乗り越えて伝えることができたとき、あなたの前には素晴らしい出来事がどんどん訪れます。

 もちろん、さらけ出すことによっていいことばかりが起きるわけではありません。いろいろな批判を受けたり、反対されたり、意地悪されたりということが起きるかもしれませんが、思いきって発信するということはそういうことです。しかし、そんな出来事がどうでもよくなってしまうくらい、頑張るあなたを見てくれている人はちゃんとあなたのそばにいますよ。

文/池田千恵、イラスト/PIXTA

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