「なければ作る」という選択肢がある

 ルールはときには破ってもいいということを、私は大学1年生のときに知りました。それまでの私はガチガチの真面目人間で、親からも「融通が利かない」と言われるような子どもでした。受験勉強はとにかく暗記することで乗り切り、こう聞かれたらこう答える、と機械的に頭を働かせることに慣れていました。自分で物事を考えるということをしてこなかったせいもあり、「で、あなたはどう思うの?」と聞かれても、どう答えていいか分からないような学生でした。

 私が通っていたのは新しい学部で、私は6期生でした。新しい学部なのでサークルもまだ数えるほどだったため、先輩たちは自分がやりたい! と思った興味の赴くままにサークルをつくりだしていました。驚いたのは、農業サークルをつくりたいといって、キャンパスの裏にあった畑を地主さんに交渉して借りてきた先輩がいたことです。その先輩はサークルの代表となり、数年後には畑で実った野菜を豚汁の具にして学園祭で振る舞っていました。

 私の理解を超えた先輩たちと出会う前の私の思考は「少ないサークルの中から、自分が少しでも興味があるものを選んで入る」というものでした。しかし先輩の思考は「自分がやりたいものがサークルにないなら、新しくサークルをつくってしまえ」だったのです。この経験から「ないものはつくればいい」ということに気付きました。これは極端な例かもしれませんが、同じ会社で、同じ価値観の下で長年働いていると「ないものはつくればいい」ということや「意味のないルールは廃止すればいい」ということに気付かない人が多いのです。