(C)PIXTA
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 先日、とあるメーカーのデザイナーを対象としたプレゼンテーション研修を行う機会がありました。研修の前の打合せの際に資料を見せてもらったところ、グラフィックはとても美しく、コンセプトも素晴らしいものばかりでした。コンペでもいつも最終まで残るそうです。しかし、なぜか最終コンペで競合に負けてしまうことが多いのがお悩みとのことだったので、コンペに勝つために、いかにプレゼンをブラッシュアップするかについて話してきました。

 事前に資料を拝見して気付いたのが、表現に自信をもっているデザイナーだからこそ陥りがちな「ワナ」でした。それは、プレゼンに「驚き」や「新しさ」を求めてしまうことです。これを私は「びっくり箱プレゼン」と名付けています。クライアントの悩みや、今回提案するデザインにいきついた背景などといった、プレゼンに至るまでにずっと打ち合わせをすすめてきたプロセスをすっとばし、クライアントに衝撃やワクワク感を与えようと、アイデア勝負に走る、つまり「びっくりさせる」ことが目的になってしまうことが多いからです。

 斬新なアイデアがいけないというわけではありません。アイデアに至るまでのプロセスを、相手主体できちんと考えていますよ、という姿勢を見せるひと手間が足りないのがいけないのです。

提出資料を却下される人は「びっくり箱プレゼン」のワナにはまっている!?

 「びっくり箱プレゼン」をしているのはデザイナーだけではありません。上司に頼まれて、残業してまで作った資料。このアイデアならきっと上司も認めてくれるはず。密かな自信をもって出した資料なのに「こんな資料を作れと言った覚えはない」と却下されたり、「良いんだけどね……」と言われつつも真っ赤になるくらい修正指示がでて落ち込んだりした経験がある人は、「びっくり箱プレゼン」のワナに陥っている可能性があります。

 あなたが提案するアイデアが、相手の悩みを解決するものである理由やプロセスをきちんと伝え、「この人たちは私たちのことをきちんと考えてくれているんだ」という姿勢をプレゼンや資料に反映させなければ、いままでの打合せは何だったんだと思われてしまいます。あなたのアイデアが結局採用されていないということは、相手の悩みへの理解が足りず、解決策を提示していないということになるのです。

 ビジネスの世界ではプロセスではなく結果だ、とよく言われますが、プレゼンの世界では、結果に至るプロセスを明示していくことが大切です。柔らかな心遣いをもって相手をよく観察し、プロセスを丁寧に追って悩みを引き出すことは、特に女性が得意とするところ。プレゼン資料を作るときにも、ぜひ日頃からの観察力をフル回転させ、その結果を仕事にもしっかり反映させていきましょう。