失敗の上での再チャレンジに、周囲はやさしい

 もう20年近くも前の話になります。大学時代、私は手痛い失敗を犯しました。しかし、この失敗のお陰で、

●失敗の上での再チャレンジに、周囲はやさしいこと

●再チャレンジすれば、過去の辛かった出来事も良い思い出に上書き保存できること

を知りました。

 当時日本に上陸したてだったコーヒーチェーンのマーケティング戦略を分析し、プレゼンをチームで仕上げる必要があり、数カ月かけて考えをまとめるということをゼミで行っていました。

 とうとうプレゼン本番。実は資料だけを手当たり次第集めるだけで時間がなくなり、それをどうまとめるかというところまで準備が全く足りず、どうしようもなくなり無理矢理論理づけをしたシナリオで、カンペを持ってそれを棒読みするしかない状態でプレゼンに臨みました。

 準備不足で自信がなく手が震え、その上カンペの文字が小さかったので本番で読めなくなり、同じところを何度も読んだ上、最後は一体自分でも何を言っているのかよく分からなくなって、固まってしまったのです。

 3人で結成したチームで、私が2番目の発表でした。3人目のメンバーにどうやってバトンタッチしたか、全く覚えていません。

 チームのメンバーに迷惑をかけてしまった申し訳なさ、準備不足で人前に出なければいけなかった恥ずかしさ、私を痛々そうに見る周囲の目(きっとそんなことはなかったのですが、当時の私にはそう見えました)

 消え入りたくなるってこういうことだ、と思いました。

 その日はゼミのみんなで懇親会があったのですが、とても懇親会に出られる精神状態でなく、家に帰って引きこもり、もうどうなってもいいや、とやけ食いしました。

 思い出すと今でも少し辛くなる思い出ですが、この経験があるからこそ、今私は、プレゼンやコミュニケーションにまつわる仕事をしていると言っても過言ではありません。こんな嫌な思いはもう二度としたくない! だからプレゼンやコミュニケーションを勉強しよう! という気持ちになったのは、この失敗がきっかけだからです。

 これには後日談があります。大失敗を帳消しにするべく、教授にもう一度プレゼンをさせてほしい、と直訴したのです。熱意が届き、特別にやり直しをさせてもらえることになりました。

 二度とあんなプレゼンをしたくない、という思いから、入念に準備しました。事前に友達にもプレゼンを見てもらい、アドバイスをもらいつつ、何度も何度も練習しました。

 おかげで、絶賛、というところまではいきませんでしたが、なんとかやり終えることができ、大きな自信となりました。