対象を振り返ったら、言葉にして感謝を示そう

 振り返ったあと大切なのは、「もとはと言えば」で登場した、感謝の「もと」になったあの人やこの人に、感謝の言葉をきちんと言葉にして伝えるということです。

 感謝は、心の中で思っているだけでは相手には伝わりません。ちょっとしたことですが、言うと言わないとでは大きな違いです。前回の記事「意見を述べるときにやってはいけない三つのこと」で、「察する」を期待しないという話を書きましたが、相手に「察してもらおう」というのはあなたのおごり。いくら感謝の気持ちをもっていても、それを分かってもらえなかったら悲しいですよね。

 私もこの苦い一件があってからというもの、嬉しいこと、ありがたいことがあったら、その都度、もとはと言えば、そうだ、あの人のおかげだ、と思ったときにお礼のメールを送ったり、ちょっとしたプレゼントを贈ったりすることを心がけるようになりました。それも、一度伝えるだけでなく、「ありがたいな」とその人の顔を思い出したとき、何度も折に触れて伝えるようになりました。

 死ぬときに後悔することの一つに、感謝の言葉を身近な人に伝えなかったことを挙げる人が多いと聞いたことがあります。感謝の言葉は、特に身近な人に伝えるのは照れくさいことかもしれませんが、一度思い切って感謝の言葉を伝えることができると、その後の敷居はぐんと低くなりますよ。

 もとはと言えば、をポジティブな状況でさかのぼり、躊躇なく感謝の言葉を伝えましょう。人生はぼんやり生きているほど長くないのですから。

文/池田千恵 写真/PIXTA

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