「もうちょっとちゃんとしてから」の「ちゃんと」は一生来ない

 発信力に自分独自のオリジナルメソッドはいらないの回でも述べましたが、多くの人は、不特定多数の場で、自分の不勉強をさらけだすのを恥ずかしく感じがちです。しかし、今まで数十年生きてきた経験を掛け合わせ、あなたの「あり方」「信念」「経験」がブレンドされて沁み出してくる経験は、あなただけのものです。あなたが思ったその時の考えや思いを、今その瞬間で切り取り、見える形で残しておくことは、時に今のあなた自身を、さらには他の誰かをも救うことにもなるのです。

 あなたの今は、あなたが積み重ね、選択してきた過去で成り立っています。「自分をリセット」「自分リニューアル」とわざわざ張り切らなくてもいいのです。「今、このとき」一生懸命考えて感じた結果を大切にしてみませんか? そのための手段として、ぜひ、ブログなどの不特定多数メディアに、自分の挑戦の過程を綴ってみることから始めましょう。

 実は、セミナーなどでこのような提案をしても、実際に行動に移す人は残念ながら1割にも満たない場合が多いのです。行動に移さない理由を聞くと、「もう少し、ちゃんとしてから始めたい」「まだ準備が整っていないからもうちょっと待ってほしい」と言われます。でも「もうちょっと、ちゃんとしてから始めよう」と思っているうちは、「ちゃんと」は一生来ないものなのです

 「ちゃんとしよう」と頑張る人たちは、インプットに一生懸命です。もちろんインプットは大切なことですが、「まずはアウトプットして、過去の自分からインプットを受けよう」という視点がすっぽり抜けているのです。

 インプットというと、本や人から話を聞くことだけのように思いがちですが、外の世界だけに限ったものではありません。今の自分を記録しつづけ、過去の自分がある程度蓄積されたとき、過去の自分からインプットを受けてみましょう。また新たな発見があるかもしれませんよ。

 中途半端で不器用で一生懸命なあなたを、恥ずかしくてもきちんと記録していったとき、数年後きっと、自分自身が書いた言葉に励まれ、自分自身を愛おしく思うことができるようになるでしょう。

文/池田千恵 写真/PIXTA

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