「自信がない」は「自信がある」の裏返し!?

 「メタ認知」という言葉があります。「脳科学辞典」(独立行政法人理化学研究所の所員が編集委員長をつとめる、脳科学分野の約1000個の用語を解説し、無償で公開するサイト)によると、「自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え評価した上で制御すること」を言うそうです。(出所:脳科学辞典 メタ認知)

 私は、「メタ認知」を、分かりやすいように「自分見積もり力(りょく)」と言い換えています。仕事において作業量や工数、日程を見積もるのと同じように、感情や思い込みからいったん離れて、あたかも自分が「幽体離脱」をしているかのように、外からの視点で自分自身をありのままに理解することができる人は「自分見積もり力が高い人」と言えるでしょう。

 前述の「優秀なのに自信がない」人は、残念ながら、今の段階では「自分見積もり力」が低いと言わざるを得ません。「私はエベレストになれるはずなのに、今の自分は富士山でしかないから落ち込む」と悩んでいるようなものです。比べる先(理想の自分)がものすごく高い上に、山の個性は様々なのに、標高の優劣しかみていないのです。理想が高いこと自体は良いことですが、最初の理想が高すぎるために、そこにいたるプロセスがイメージできず、見積もりを立てるまでに至っていないことが問題です。

 また、比べる先がものすごく高いということは、実は、「自信がない」と言いながら「自分だってがんばればそこまでいけるはず」と、心の底では思っているのです。本当に自信のない人だったら、そもそも比べる先をそこまで高い場所におく、という意識すら持てないはずですから。その意味においては、実は「自信がない」は「本当の私はもっとできるはず」という自信の裏返しなのです。

 だとすれば、「自信がない」と思ってしまう気持ちや原因をきちんと見据えて、適正な状態にもどしていくことができれば、自然に「自分見積もり力」は上がるのではないでしょうか。自分見積もり力が高くなればなるほど、今の自分と将来なりたい自分との差が分かるようになります。スタート地点を正しく把握できるので、がんばりどころを間違えずにゴールを目指すことができるようになります。