奥深いジビエの世界、産地や部位別に楽しむ

 さらにジビエを極めてみたくなったら、産地や部位ごとの味の違いを楽しんでみよう。

手前から蝦夷鹿のロース、モモ、奥が芯玉と並ぶ鹿肉の盛り合わせ。滋味深さを味わいたい。

 全国のハンターから直接届く、その日のおすすめを5品盛り合わせて提供しているのは、ジビエ専門店「焼ジビエ 罠 炭打」。店独自のネーミングで「手止メ」と呼ばれている。ここでは肉の種類、部位、産地までがリストで示され、より詳しく入荷状況が分かり、興味深い。

 例えば鹿なら日本有数の蝦夷鹿の産地である北海道・白糠町から、猪は熊本からと明記されている。また鹿にも蝦夷鹿と日本鹿とがあり、さらには熟成鹿も楽しめるほか、鯨や熊、ウズラなども人気だという。

 職人が目の前にセットされた七輪で手焼きしてくれるので、食べ頃やジビエのあれこれを直接聞くことができる。「ジビエの入門としては、鹿の芯玉や猪のロースがおすすめですね。芯玉はモモの中でも特に繊維が細く軟らかい部位で、肉質の軟らかさに驚かれます」と教えてくれたのは店長の前田優さん。リピーターも多いため、部位や調理法をいろいろ変えてそろえたり、肉に合うよう独自に調合した味噌に漬け込んだり、さまざまな工夫をしているとか。また良い肉を仕入れるためには、生産者(ハンター)との折衝も重要だと語る。

 こうした専門店が増えることで、ジビエ肉の需要が増え、単なるブームにとどまらずに一つのジャンルとして定着させることができる。それは地方の活性化にもつながり、ハンターの生活も安定するという。まさに食べることで後継者の育成や地域の応援にも貢献できるのだ。

パクチー、青ネギ、三つ葉などを混ぜ込んだ罠サラダ(480円)。ジビエとの相性もバツグンだ。

高品質の日本のジビエ「スーパージビエ」

 最後は、自治体レベルで認証されたAランクなど選りすぐりの肉だけを使ったジャパニーズ・ジビエを堪能しよう。

蝦夷鹿、猪、土佐鴨など、その日の入荷を盛り合わせた炭焼き三種盛り「三獣奏」はマタギ気分が満載。

 写真は日本のジビエブームの先駆けともいえる「炉端 美酒食堂 炉とマタギ」で提供されているもの。ジビエという言葉自体はフランス語だが、日本にも長く続いてきた狩猟文化がある。東北や北海道の山林で、主に狩猟で生計を立てているマタギの歴史は古い。

 しかし近年、日本各地では鹿や猪などの野生動物による農産物や樹木の被害が問題視されてきた。その対策の一つとして、捕獲した野生動物を地域の食文化として確立してきたのだ。こうした取り組みの一環で、現在では和歌山県や三重、長野などでは自治体レベルでジビエ肉の認証制度が設けられている。

 これらの流れと寄り添うように、昔ながらのマタギの名を取り、2006年に日本のジビエとイタリア料理と融合させた料理を出す店として水道橋にオープンしたのがジビエ専門店「伊のマタギ」。そして新たな店舗展開として昨年新宿・歌舞伎町にオープンしたのが「炉端 美酒食堂 炉とマタギ」だ。

 同店ではジビエ文化を広めるために、利益を度外視しても安価に提供すること、クセが少なくおいしい肉を提供することにこだわってきたという。高品質のジビエ肉を確保するために捕獲した鹿を一時的に確保する「養鹿場」(ようろくば)に解体設備を備えたり、先の自治体の認証制度でいえば、例えば和歌山の猪ならAランクのみを扱うなど、一貫してレベルの高い肉を入荷してきた。

 「炉とマタギ」ブランドの開発を手掛けてきたスパイスワークスの西根誠さんは「これまでも頻繁に現地に出向いてハンターさんとの信頼関係を築いてきました。当店では、高品質のジビエを“スーパージビエ”と呼んでいますが、ジビエは硬い、おいしくないというネガティブな思い込みを払しょくし、さらにおいしいジビエを広めていきたいと考えています」とジビエ文化確立への思いを語ってくれた。

 こうした思いが活かされ、店内で供される「三獣奏」(1880円)では蝦夷鹿、猪、土佐鴨などから、猪豚やウサギなどまで、その日のおすすめを食べ比べできるセットが人気だ。また山ワサビや生姜味噌などの調味料とともにいただく「葉っぱ巻き」や、炉端で焼いた原始焼きなど、マタギ小屋を訪ねたような気分に。店内は「マタギの寛ぎの部屋」などのコンセプトで隠れ家気分も満喫できる。

 また3月中なら、女性限定(金・土除く)で時間制限なしの1980円でジビエ6種の食べ放題も行っている。ジビエにトライする機会として活用するのもおすすめだ。

 数々の要因もあっておいしくなり、そして食べるチャンスも増えたジビエの世界。ぜひこれを体験しない手はないだろう。

※価格は特記がない限り、すべて税抜です。

取材・文/GreenCreate