年代によって女性ホルモンを使い分ける

 避妊を含めて、ライフステージごとの体の変化に上手に対応していくためには、年代によって女性ホルモンを使い分けることが考えられる(図3)。

図3 寺内公一さん提供
図3 寺内公一さん提供

 たとえば20~30代にOC・LEPを利用していた人は、OC・LEPを使い続けるのではなく、40代以降の適切な時期にHRTに切り替えていくことがすすめられる。その中で、40代以降に避妊が必要なら、OCではなくIUSが有用だろう。

 なぜなら、OCは避妊、LEPは月経困難症の治療、HRTは更年期症状の緩和と骨粗しょう症や心血管疾患の予防ということで目的が異なるためだ。また、OCはHRTの3.6~48.0倍と含まれているホルモン量にも差がある。少し補う目的でOCを使うとホルモン量が多すぎて危険が大きくなる。

 HRTについては、エストロゲンだけを補う場合、子宮内膜増殖症という前がん病変のリスクが上がるため、現在は症状をとるためのエストロゲンと、子宮内膜を保護するためのプロゲスチンを組み合わせて行うことが主流となっている。

 IUSを入れた人がHRTを行う場合、IUSを入れた後はプロゲスチンが子宮内膜を保護してくれるので、外からエストロゲンのみを加えていけばよい。

 「このように、個人の状況や希望に合わせていくつかの手法を組み合わせることによって、40代以降のヘルスケアを上手にコントロールしていけるのではないでしょうか」(寺内さん)

女性ホルモン低下につながる過度なダイエットはしない

 10~20代から備えられることもある。食事や運動などの生活習慣が更年期の症状を左右するというデータもあるため、まずは若いうちから健康な生活を心がけ、それを習慣化しておくことが大切だ。

 また、骨粗しょう症予防に関しては、骨が減る前の若い年代で最大骨量を高め、骨を蓄えておくことがとても重要だ。最大骨量を獲得するうえでは遺伝が大きな要因を占めるが、やはり食事と運動でしっかりとした骨をつくっておきたい。

 「ある程度、衝撃が加わることによって骨は強くなりますから、特に運動についてはランニングやジャンプなど、負荷のある運動が必要です」(寺内さん)

 さらに、体がやせていること自体、過重が低くなるため、骨粗しょう症のリスクにつながる。10~20代での過度のダイエットは、骨に対する負荷を下げ、必要な栄養はとれず、ひどくなると女性ホルモンが出なくなって無月経に陥ってしまう。無理なダイエットややせ過ぎは、将来の健康を大きく損なってしまうと肝に銘じておこう。

 いざ病気になってから後悔しても手遅れということもある。若い時期から、女性ホルモンや更年期以降の体の変化について理解を深め、健康な生活習慣を維持していこう。

この人に聞きました
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科女性健康医学講座准教授
寺内 公一氏
1994年東京医科歯科大学医学部卒業。同大学医学部附属病院、国保旭中央病院、都立大塚病院にて研修、2005年エモリー大学リサーチフェロー、2012年より現職。専門は女性医学、女性ヘルスケア。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。

■関連情報
日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
http://www.jmwh.jp/n-ninteiseido.html

文/塚越小枝子、イメージ写真/PIXTA