病気は当事者にならないとわからない……実際は当事者さえわからないことだらけ

 私は卵巣がんの基本治療ガイドライン、抗がん剤治療、副作用、治療にかかる期間など、あらゆることを調べました。

 情報を得るため患者会に入り、フォーラムで難しい講演も聞きました。信頼できる腫瘍内科医と話し、抗がん剤治療の偏見を払しょくでき、私は治療を受ける決心をしました。

 毎月2泊3日入院でのTC療法(卵巣がんの基本的な抗がん剤治療)では、抗がん剤治療は体へのダメージも大きく、ひどい吐き気や脱毛の副作用に恐怖感がありましたが、私の場合は手足の痺れと痛みがひどく、また治療を重ねるごとに変化していく自分を見るのもとても辛いことでした。特に脱毛することは、自分が自分でなくなってしまうようで悲しいことです。眉毛やまつ毛も抜けるので、メイクをしないと別人でした。

 今は2か月おきに通院検査をしています。それを3か月、半年、1年、そして2年、最終目標は5年と間隔をあけていくこと。再発は幸いありませんが、心配は抱えています。

 今の私なら、子宮内膜症を長期間放置したことが卵巣がんに繋がったことが分かります。子宮内膜症から嚢胞が出来て、その一部分ががん化することは卵巣がんの大きな流れとしてあるからです。放置した自分自身にも腹が立ちますが、診察時に医師が子宮内膜症と卵巣がんの相関性の話をしてくれていたら、定期的に病院を受診していたのにと、悔しい思いを持ち続けています。

 がん統計予測によると、昨年の日本の卵巣がん羅患者数は1万400人。ご自身の家族に婦人科系がんの人がいれば、20代から遺伝性の検査を受ける選択があります。子宮内膜症からチョコレート嚢腫ができないよう検査で予防することもできます。食事や運動などで予防できるがんではないからこそ、定期的な検診こそが大切です。なにもせず「自分は大丈夫」ではなく、なにか行動を起こして「自分は大丈夫」にしてください。

 本日、5月8日は世界卵巣がんデー。自分の卵巣は大丈夫かな? と卵巣がんのことを少しでも心に留めていただけたら嬉しいです。

■関連サイト
卵巣がん体験者の会『スマイリー』
がん情報サービス(国立がん研究センター)

文/太田由紀子

プロフィール
太田由紀子
産業カウンセラー
太田由紀子さん
出版社、放送局勤務後、産業カウンセラーの資格を取得。傾聴でカ ウンセリングを行う。日経ビジネ スオンライン「メンタルリスク最前線」コラム執筆。日経ビジネスムック『課長塾 部下育成の流儀』にも登場。