1. その相手だからこそ書けることを書く

 会話でも文章でも「この人は誰にでも同じことを言っているんだろうな」と感じることがあります。手書きが一行もないメッセージのない年賀状を受け取ったときのような気持ちです。文面をちゃんと読む気になれないし、返信もしなかったりします。

 逆に、たとえ短くても「僕をちゃんと見て発してくれている言葉だ」と思うこともあります。すべての人間関係には固有の文脈があり、他人はその内容をすべて知ることはできません。だからこそ、かけがえのない親密さと探究心が生まれるのです。

 飲み会などで一度だけ会った相手だとしても、その場で起きたささやかな出来事や食べた料理、相手の立ち振る舞い、あなたと交した言葉などの総体は二人だけのものです。それを好ましく思ったからこそ、あなたは相手に連絡を取り、また会いたいと思っているのですよね。ならば、できるだけ丹念に思い出し、そのときは言葉にできなかった感想や意見などを文章にしましょう。

 二人だけの文脈を踏まえて、ユーモアや励ましを込めて丁寧に書いた文章には、その人らしい温かみが宿ります。難しい単語や小粋な言い回しを無理に使う必要はありません。相手の顔を思い浮かべながら丁寧に素直に文章を書けば、受け取った相手はきっと嬉しく感じるはずです。

2. 相手に対する重すぎる感情を書くのは避ける

 どんなに一目惚れをしたとしても、付き合ってもいない相手にメールで慕情を爆発させるのは避けましょう。はっきり言って重いです。もっと厳しく言うならば、大人としての思いやりに欠けています。自分はほとんど何も感じていない相手から、唐突に愛の告白をされたりしたら、普通の人は戸惑いや恐れを覚えてしまいますよね。

 お酒を飲んでいたり深夜だったりすると、いつも以上に気持ちが高ぶって「重い文章」になりがちです。相手に対するポジティブな感情を伝える内容であったとしても、相手との関係性を無視したものでは重苦しくなってしまいます。

 盛り上がる恋愛感情はひとまず脇に置き、そのパワーを別のところに活用しましょう。ポイント1でご説明した「文脈」をしっかり見つめた言葉を選ぶことに注力すれば、相手の気持ちを明るく軽やかにするようなメール文面になるはずです。