駅上の喫茶店「東亜サプライ」に現れた原田さんは色白で小柄。清潔感のあるカジュアルな服装をしています。美大を卒業してから現在の書店で働いているそうです。僕は結婚して愛知県に引っ越すまで、イラストレーターやマンガ家が多く住んでいて小粋な古本屋や書店が点在する西荻窪(吉祥寺の隣にある小さな町)で暮らしていたので、原田さんには何か「懐かしい匂い」を感じました。

 原田さんのほうも僕に対して親近感を持ったのだと思います。すぐに打ち明け話をしてくれました。

 「32歳まではお化粧もせずに働いていました。遅まきながら婚活を始めて化粧してみたらあまりに変な顔になったようで、職場の同僚に『常連客のおじさんに似ている』と爆笑されました(笑)」

 原田さんは恋愛に不慣れだったため、結婚相談所に入会して紹介をしてもらうことにしました。32歳ならば若いほうですよね。実際、かわいらしい原田さんは人気を博し、熱烈なアプローチをしてきた40代男性もいたそうです。

 「悪い人ではなかったのですが、結婚を急いでいるように見えて、私の気持ちが引いてしまいました。男性や結婚を受け入れるキャパシティがなかったのだと思います」

 かといって、合コンなどで好きな男性が見つかるとも思えず、原田さんは別の大手結婚相談所に移ることにしました。そこでは同い年で仕事を一生懸命にやっている男性と出会えたそうです。

 「食べ物の趣味も合って、『次はどこに連れて行ってくれますか』なんて頼られたりして、デートをするのは楽しかったです。好きにもなりました。でも、あるときに『10年後の2人』が話題になり、結婚が前提のお付き合いなんだと思うと気が遠くなって別れてしまったんです」

 結婚相談所での出会いなんだから、結婚前提なのは当たり前ですよね。原田さん、はた迷惑な人だな。でも、面白い……!

 何人かの男性とお見合いをしたりデートをしたことは無駄ではなかったと原田さんは振り返ります。仕事に一生懸命な人を好きになり、自分も頑張ろうと思えました。さらに、異性と話すことに慣れ、人当たりが良くなったと感じています。

 「実は、少し前まで転職活動をしていました。ある小売業のマネージャー職に挑戦してみたんです。最終審査で落ちてしまいましたが、我ながらがんばったと思っています。そんなときに大宮さんの連載を見つけて、『またお見合いもやってみようかな』と」

 男性に求める条件も明確になっています。「変に落ち着いているのではなく、常に自分に疑問を持って努力している人。成長過程にある人」です。会社を辞めて私費で大学院に通い、コンサルティング会社に転じて奮闘している山本さんは確かにぴったり当てはまりますね。わかりました。原田さんをオネット会員に登録し、さっそく山本さんとのお見合いをセッティングしましょう。続きはまた来週!

イラスト/つぼいひろき