こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。みなさんは、今の職場で仕事を始めるときに、健康診断を受けましたか? 今回は、入社時の健康診断にまつわるお話をご紹介します。
健康診断の受診時間
正社員として入社したばかりの則子さん。会社から健康診断を受けるように言われ、自宅近くにあるクリニックで健康診断を受けました。午前中に健診を受けたため、出社したのは午後から。その日は仕事が終わらずに、残業となりました。
健診の費用は一旦立替えて支払うように言われたものの、領収書を会社へ提出すると、すぐに全額支払ってもらえました。ホッとするのも束の間、経理担当者が「うちの会社は、健康診断を受けている時間、給与は出ませんから」と言われビックリ。
「会社の命令で健康診断を受けたのに? それになぜ今、健康診断を受けなきゃいけないの?」
則子さんはどうも納得がいきません。そもそも、正社員で採用されたというのに、給与が時給制というのも気になっていました。この場合、どこか問題があるといえるでしょうか?
入社時のルーティーン
正社員で時給制。たしかにあまり馴染みはありませんが、必ず正社員は月給制にしなければならない、という決まりがあるわけではありません。ですから、正社員が時給制の労働契約であったとしても、それ自体が問題とは言えません。
入社早々の健康診断に、則子さんは違和感を持っているようですが、事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、定められた項目について、雇い入れ時の健康診断を行わなければならないことになっています(労働安全衛生法規則第43条)。
則子さんのように入社してから健康診断を受ける場合もありますが、採用選考時の提出書類のなかに、健康診断書が含まれていることもあります。この場合、健康診断にかかる費用も自分で負担しているケースが見受けられます。
法定の項目を満たす健康診断を受けたあと、3か月を経過せずに採用された場合において、健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、雇い入れ時の健康診断をしなくても差し支えないものとされていますが、これを根拠に健康診断を採用選考時に実施することが求められているわけではありません。
そもそも、この雇い入れ時の健康診断は、常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置、入社後の健康管理に役立てるために実施されるものです。まして応募者の採否を決定するために実施するものではありません。