合意解約できないときは退職届という方法も

 千晴さんの入社日はもう決まっています。そこまでに会社を辞めたいと思っていたので、あと半年も退職を先延ばしにすることなどできません。

 「会社が認めてくれないと、退職できない」と思い込んでいた千晴さんですが、決してそういうことはありません。退職の申出は、会社の承認までは求められていません。

 自己都合で辞める場合、会社と労働者が合意して労働契約を終了する合意解約と、労働者が一方的に辞める自主退職(辞職ともいいます)に大別できます。一般的に円満に会社を退職する方法としては、退職願を提出して労働契約の解約を申し込み、会社が承諾すれば退職するという流れを取ることが多いですが、これは合意解約にあたります。

 千晴さんのように、うまく合意解約ができない場合は、無理に会社の承諾を得ようと頑張らなくてもいいのです。期間の定めのない労働契約の場合、解約の申し入れから2週間経過すると退職が成立します(民法第627条第1項)。

 会社の就業規則は、合意解約を前提として1か月前までの申出をルールにしているところは少なくありませんが、必ずしも1か月前に言わなかったら退職できない、ということではありません。そうした原則をおさえつつ、なるべく円満に退職できると、お互いに気持ちよいスタートがきれるでしょう。

 退職の意思表示は口頭でも有効です。ただ、口頭では確固たる証拠が残りませんので、退職届をもって解約の意思表示する方法が望ましいといえるでしょう。

文/佐佐木由美子

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