盲点をつく不正
身内の死亡について、忌引休暇を申請するために死亡診断書を求める、ということが会社側もやりにくい一面があります。もちろん、会社のルールとして提出を促すところもあるでしょうが、あまりそうした話を聞いたことはありません。つまり、従業員を信頼して、会社も休みを与えているのです。
弔電やお花の手配などのため、通夜や葬儀の日時や場所などを会社に知らせることはありますが、本人が辞退すれば、あえてその日その場所で通夜や葬儀があるかどうかまで、わざわざ確認はしないものでしょう。まして、従業員にとって血縁関係の遠いおじ・おばとなれば、あえて弔電まではしていない、という場合も多いものです。
停職処分を受けた女性職員は、こうした盲点をついて不正を重ねたものと思われます。しかも、17回も長期にわたって繰り返してきました。もしかしたら、その感覚はマヒしていたのかもしれません。上司が4人代わったとしても、職場で噂にならなかったのが不思議なくらいです。
信頼をベースに成り立つもの
社会保険労務士という仕事をしていると、親族の死を偽って忌引休暇を不正に申請した問題に出くわすことが残念ながら時々あります。そのほとんどが、おじやおば、祖父母が亡くなったというケースでした。さすがに同居している家族を亡くなったことにするには、ウソがばれると思ったのかもしれません。
会社にウソをついて、働かずして給与をもらっているわけですから、不正の内容にもよりますが、懲戒処分は免れないでしょう。たとえ休みにくい職場であったとしても、ちょっとした出来心であったとしても、不正取得には変わりありませんので、絶対にしてはいけない行為です。
こうした不正を背景に、慶弔休暇の見直しを行った会社もあります。労使間の信頼ベースで成り立ってきた良き慣行を、一部の問題社員によって台無しにされてはたまりません。
会社によって様々な休暇制度がありますが、くれぐれも休暇を取るときは、事実に即して申請するように心がけてください。
文/佐佐木由美子 写真/PIXTA
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