どう働くかは、労働契約による

 労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者および使用者が合意することによって成立します(労働契約法第6条)。

 そして、使用者は労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を書面で明示しなければなりません(労働基準法第15条1項)。労働時間がフレックスタイム制の場合は、そのような労働条件で働くことで、給与がもらえる契約となり、始業・終業時刻があらかじめ定められてる場合は、その時間を守って働くこととなります。

 労働者および使用者の合意があれば、労働契約の内容である労働条件を変更することはできます(労働契約法第8条)。しかし、労働者の判断で、勝手に労働条件の一部である労働時間を変えることは認められていません。

 早百合さんのように、始業・終業時刻が休憩時間を除き午前9時から午後6時までと定められていれば、その労働条件に従って1日8時間働くことが決められているわけで、1日の所定労働時間を働けばよいというわけではありません。しかし、まれにこうしたルールを誤解している人もいるようです。

勤務先の労働条件をしっかり確認しよう! (C)PIXTA
勤務先の労働条件をしっかり確認しよう! (C)PIXTA

自社のワークルールに沿った働き方を

 近年、働き方は多様化しており、在宅勤務や職場外での勤務など、働く場所が自由に決められる企業もあれば、働く時間も自分で決められる場合もあります。

 転職市場が活発化して人材の流動化が進む一方、時に前職のワークルールを持ち出してトラブルとなるケースも見受けられます。特に前職が大手有名企業の場合、そのやり方が正しいとばかりに押し通そうとする人も一部いるようです。

 違法性があれば無論NGですが、基本は職場ごとに定められたワークルールに従って働くことが求められます。舞香さんのように、前職で使いやすかったフレックスを今の職場に持ち込もうとうするのは完全に就業規則違反であり、すぐに改める必要があります。実際には制度に基づいたものではないため、フレックスではなく、単に遅刻と残業をしているにすぎません。

 遅刻が多ければ、通常は勤怠不良で、賞与や昇給の査定に影響を及ぼすことになりますし、会社によってはペナルティーや懲戒処分を受ける場合も考えられます。周囲にも迷惑を掛けることとなり、良いことはありません。自社のワークルールに沿った働き方を心掛けましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA