派遣労働者の場合は?

 派遣労働者が働く場所は派遣先ですが、派遣先が変わるたびに賃金水準も変わってしまうと、派遣労働者の賃金水準が不安定になってしまうという課題があります。そこで、(1)派遣先の労働者との均等・均衡待遇、あるいは(2)一定要件を満たす労使協定による待遇、いずれかを確保することが義務化されます。併せて派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務が新設されます。

 また、こうしたルールを守られるようにするため、派遣先事業主に対して、派遣料金の額の配慮義務が設けられることになりました。

同一労働同一賃金ガイドラインに注目

 いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間で、どのような待遇差が不合理に当たるのか、今後は同一労働同一賃金ガイドラインの策定によって、規定の解釈を明確化していきます。

 既にあるガイドライン案について、今後は関係者の意見や国会審議を踏まえて、最終的に確定することになっています。典型的な事例として整理できるものについては、問題となる例・問題とならない例という形で具体例が明記されますが、各社各様の状況においてすべてを整理することは難しいため、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれます。

 今後、同一労働同一賃金に大きな影響を与えるガイドラインについては、注目したいところです。

待遇に関する説明義務の強化も

 これまで、パートタイム労働者と派遣労働者においては、賃金、福利厚生、教育訓練などの待遇内容に関して説明責任が課されていました。改正後は、有期雇用労働者にも本人の待遇内容および待遇決定に際しての考慮事項に関する説明義務が創設されます。

 また、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、事業主に正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等の説明を求めた場合に、説明義務が創設されました。この説明を求めたことによる不利益な取り扱いは禁じられます。

 非正規労働者が正社員との待遇差に不満がある場合、改正によって、待遇差の内容や理由について説明を受けられるようになるという点が変わります。

正社員と非正規労働者の待遇差について、説明を求められた場合、企業側は従業員に対してきちんと説明責任を果たす義務があります (C)PIXTA
正社員と非正規労働者の待遇差について、説明を求められた場合、企業側は従業員に対してきちんと説明責任を果たす義務があります (C)PIXTA

 こうした改正ルールがきちんと守られるために、行政による事業主への助言・指導の規定が整備されます。さらに、労使間で紛争になったときに、裁判をせずに解決する手続き(行政ADR)の規定を、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者で統一的に整備されることになりました。均衡待遇や待遇差の内容・理由に関する説明についても、行政ADRの対象となります。

 今回ご紹介した雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた改正(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)については、2020年(中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年)4月1日から、施行されます。非正規雇用として働く方は特に、こうした改正に注目して情報を収集し、自分の働き方や雇用環境等について考えていただくきっかけとなればと思います。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA