延長時間にも限度はあるが……

 36協定を締結して労働基準監督署に届け出ていることで、法定労働時間を超えて働いたとしても、使用者が罰せられることはありません。

 どのくらい労働時間を延長して働くことができるかというと、厚生労働大臣の告示(平成10年労働省告示第154号)により、上限が設けられています。一般の労働者の場合、1カ月45時間、1年360時間……というように、期間によって限度時間が定められています(図表参照)。

延長時間の限度:一般労働者の場合
期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1カ月 45時間
2カ月 81時間
3カ月 120時間
1年間 360時間

 ここで、疑問に思う方もいるかもしれません。「1カ月45時間?もっと長く働いているけれど、違法では?」と。実は、ここにも知られざるカラクリがあります。

 本来であれば、この限度時間を守るべきところ、決算業務や納期のひっ迫など、特別な事情で一時的にもっと残業をせざるを得ない状況が発生するかもしれません。

 このように、特別な事情で限度時間を超えることが予想されるときには、「特別条項」を付記することで、さらに限度時間を超えて働かせることが認められているのです。これを「特別条項付36協定」といいます。

特別条項は1年間に6カ月まで

 特別条項付36協定においては、恒常的な業務の繁忙は理由として認められません。あくまでも「特別の事情」に限られるため、どのような事情が具体的に生じる見込みがあるか記載する必要があります。また、1年のうち最大6カ月までしか限度時間を超えて働くことは認められていません。

 たとえば、労使協定で取り決めた上限時間が1カ月45時間としていても、会社によっては特別条項により、1カ月60時間、70時間とすることも現状のしくみでは可能といえます。

 これでは、いくら限度時間を設けていたところで、特別な事由があれば、結果としてさらなる長時間労働が認められてしまうことにつながってしまいます。

 政府が取り組んでいる「働き方改革」では、こうした長時間労働を防ぐために、36協定の運用について見直しが議論されています。