2019年4月からはこう変わる

 年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えることとされていますが、職場へのためらいなどもあって、取得率が低調な現状にあります。日本は、世界と比べても年休の消化率が低く、世界30カ国中、2年連続最下位という調査結果もあります(エクスペディア・ジャパン「有給休暇国際比較調査2017」)。政府は働き方改革を進める中で、長時間労働の是正と併せて、休みをもっと取れるようにするために、労働基準法を改正することとしました。

 2019年4月から、すべての企業において、年10日以上の年休が付与される労働者について、年5日は使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。

 例えば、4月1日に入社したフルタイム社員は、同年10月1日に10日の年休が付与されます。これを基準日として、翌年の9月30日までに、5日について時季を指定して年休を取得させる必要があります。これまでのように本人の申し出を受けるばかりでなく、労働者に希望を聴き、その希望を踏まえて時季を指定して与える点にポイントがあります。


 もっとも労働者が自発的に5日以上の年休を取得している場合は、使用者による時季指定の必要はありません。このため、従来から年休の取得率が高く5日以上は必ず休みを取っているような職場では、それほどのインパクトはないかもしれません。

 しかし、なかなか年休が取りにくく、取得率が低い職場では、会社側としては年5日の年休を取ってもらうための対応策を考えてくるでしょう。例えば、年度当初に労働者の意見を聴いた上で「年次有給休暇取得計画表」を作成し、これに基づき付与される方法や、「年次有給休暇の計画的付与制度」の導入などが考えられます。

 計画付与とは年休のうち、5日を超える分について、労使協定を締結することで、会社が計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。例えば、年末年始や夏季、ゴールデンウイークなど、比較的業務に支障がない期間に休ませることなどが考えられます。この制度は、全社一斉の取り扱いばかりでなく、班・グループ別、個人別でも可能です。今後こうした年休の計画的付与についても、社内で話が出てくるかもしれませんので、ぜひ覚えておいてください。

新ルールは管理職も対象

 「上司が休みを取らないから部下も休めない」、といった話もよく耳にしますが、今回の改正は当然ながら労働者である管理監督者も含まれます。長時間労働を招きやすい管理職が率先して休みを取ってくれることで、全体として年休を請求しやすい雰囲気になる可能性は十分に考えられるでしょう。

 2019年4月から改正される年休の新ルールは、労働者がいるすべての事業場において対象となります。小さな会社だから関係ない、といったことはありません。この新ルールを守らないと使用者が罰せられるため、会社としても決して無視することはできません。

お休みを取って、リフレッシュ。たまにはそんな時間も必要です (C)PIXTA
お休みを取って、リフレッシュ。たまにはそんな時間も必要です (C)PIXTA

 これまであまり年休を取れなかった方は、自分自身のために計画的に年休を活用して、心身をリフレッシュさせてくださいね。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA