認識不足からの不適切な対応に注意

 今回のように、会社内で業務に起因して発生した事故は「業務災害」となり、すみやかに労災保険が適用されるのが、本来のあるべき姿です。しかし、会社からは労災保険について、一切説明を受けることはなく、康代さんが申し出て、ようやく対応してくれる有様でした。

 小さな職場、まして危険業種でもなければ、認識不足から適切な対応が取られていないことも十分に考えられます。康代さんが相談したことをきっかけに、事態は好転しました。

 もしこのまま、疑問を持たずに健康保険を利用していたとしたら、まったく違う結果になっていたでしょう。業務災害の場合、病院での医療費が実質無料となる(療養補償給付)とともに、休業期間中は「休業補償給付」を申請できます。

 休業補償給付は、
(1)業務上の理由による負傷や疾病による療養のため
(2)働くことができず
(3)給与をもらっていない
という3つの要件を満たす場合に、休業4日目から支給されるもので、休業特別支給金と合わせて、給付基礎日額(※)の80%が支払われます。

※給付基礎日額とは、事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3カ月間に支払われた給与(賞与を除く)をその期間の歴日数で割った1日あたりの賃金額をいいます。

 こうした補償があることで、安心して治療に専念することができるといえるでしょう。そもそも、健康保険は業務外の事由による傷病が対象となるため、康代さんのケースでは利用することはできません。

 仕事を長期間休むことで、雇用契約が打ち切られてしまうことを懸念される方もいるかもしれません。これについては、「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後の30日間については解雇してはならない」ことが法律で定められています(労働基準法第19条1項)。そうした点においても、私傷病休職とは取り扱いが大きく異なっています。