ノーワーク・ノーペイ?

 店長は、休業中は店舗の売り上げもゼロになるし、全員休みになるのだから、その間の給与は支給されない、というのです。「ノーワーク・ノーペイという言葉があるとおり、会社は支払い義務がない」という説明でした。

 あるスタッフは「年次有給休暇が余っているので、それを使いたい」と言いました。しかし、店長は「それはできない」の一点張りです。

 長期の休みをもらえるのはいいですが、給与が出ないとなると、話は別です。望まない休みを一方的に与えられて、給与カットは行き過ぎでは? と彩月さんは疑問に感じました。

 こういった場合に、「ノーワーク・ノーペイ」は通用するのでしょうか?

会社都合で休みになるのなら、給与カットは行き過ぎでは? (C)PIXTA
会社都合で休みになるのなら、給与カットは行き過ぎでは? (C)PIXTA

「休業手当」に該当するケースとは

 会社の都合で、仕事がなければ休みとなったときに、その日数分の給与がカットされてしまっては、生活が安定しません。

 労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100の60以上の手当を支払はなければならない」としています(同法第26条)。これを「休業手当」といいます。

 これは、使用者に責のある休業について、労働者の生活を保障するために、労働基準法で使用者に休業手当の支払いを義務付けたものです。

 民法においては、使用者の責めに帰すべき事由によって労働義務が履行できないときは、原則として給与全額を支払うものとされています。ただしこれは、使用者の故意・過失またはこれと同視すべき事由がある場合です。

 一方、労働基準法においては、使用者側に起因する経営上の障害も含むものとされており、もう少し広く解釈されます。ただし、地震や台風などの天災については、使用者側に起因するとは言えませんので例外とされます。

 今回、彩月さんのケースでは、店舗リニューアルという使用者側の経営上の事情によるもので、会社からすれば売上が立たない、といってもそれは理由になりません。使用者の故意・過失とまでは言えませんが、休業手当の支払いが妥当といえるでしょう。

 休業手当は、平均賃金の100分の60以上と定められています。平均賃金の6割以上を支払ってもらえるよう、会社側と話し合ってみてください。リフレッシュして、気持ちよくリニューアル後の店舗で仕事ができるといいですね。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA

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