未来を予測して備えておくことも可能に

 ワークルールを知っておくといい理由は、決してトラブルに遭ったときのためだけではありません。自分の働き方を考えるときに、役に立ってくれることもあります。

 例えば、転職を考えているときに、有期労働契約の求人があったとしましょう。そのとき、給与や仕事内容、就業場所の立地など、表向きの労働条件だけで判断してはいけません。有期労働契約であれば、契約更新の可能性の有無、更新された場合でも上限が定められているか、あるいは正社員転換制度などがあるか、といった労働条件を確認しておくことが大切です。

 有期労働契約であっても、同じ事業主の下で5年間働くと、無期労働契約に転換できる権利が発生します。しかし、そもそも5年働くことができなければ、こうした権利は行使できませんので、切り替えて次の職場を探さなければなりません。そうしたところまで見越した上で、この転職が今後のキャリアにどのような意味を持つか、冷静に考えていただきたいのです。要は、ワークルールの知識があれば、次に打つ手をあらかじめ立てて備えておくことができるといえるでしょう。

密接に関わる社会保障

 もう一つ、連載タイトルにある「お金」について。この連載では、社会保障制度でいざというときに受けられる給付金について、主に取り上げてきました。私たちは、いわゆる「揺りかごから墓場まで」、社会保障制度の恩恵を受けながら暮らしています。

 20歳になれば国民年金の被保険者となりますが、会社に勤めるようになると、雇用保険や健康保険、厚生年金保険に自分自身が被保険者として加入して、保険料を支払うようになります。しかし、会社でわざわざ社会保険のことについて、教えてくれることはありません。気付けば、「給与明細からたくさんの社会保険料が天引きされているなぁ」程度の感覚ではないでしょうか。

 しかし、これらのお金がいったい自分にどのように関わっているか、どのような状況のときに活用できるか、知る手立てが普段の生活の中ではなかなかありません。そして、いざ働けなくなって生活に困ったときにお金が欲しい、給付金をもらいたいと思っても、自動的に振り込まれるわけではなく、自分で請求しなければなりません。自己責任と言ってしまえばそれまでですが、自分で請求するためには、ある程度の仕組みを理解しておくことが大切です。

ワークルールや社会保障に関心を

 人生100年時代といわれ、寿命が延びていく中で、働き方も今後変わっていくことでしょう。多様な働き方を考える上でも、ワークルールを知っておくことは大切ですし、お金(社会保障制度)も一体を成しています

 これまで、さまざまなケースをご紹介しながら、ワークルールについてお伝えしてきました。何か一つでもストーリーやキーワードが頭の片隅に残っていれば、ネットを通して検索してみることで、いろいろな情報をキャッチすることができると思います。

 私たちがよりよく働き、生きていくために、これからもワークルールや社会保障制度にぜひ関心を持っていただければと思います。きっとあなたの未来に、役立ってくれるものだと信じています。

よりよく働き、生きていくために――。知識は、きっとあなたの未来に役立つと思います (C)PIXTA
よりよく働き、生きていくために――。知識は、きっとあなたの未来に役立つと思います (C)PIXTA

 最後になりますが、これまで長い間にわたり、「職場で賢く生き抜く! ワークルールとお金の話」をお読みいただき、ありがとうございました。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA