こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。一身上の都合により、年末に退職予定の乃利子さん。辞めるときになって、大変な事実が発覚しました。

まさかの「うっかり忘れ」

 個人クリニックの医療事務員として、2年近く働いていた乃利子さん。30歳を目前に、別の仕事にもチャレンジしてみたいと、転職のために今のクリニックを年末で退職する予定です。

 もともと退職金制度はありませんでしたが、失業手当があるから何とかなるだろう、と思っていました。ところが、離職票を発行してほしいと伝えると、院長が「申し訳ないが、離職票は出せない」というのです。

 不審に思った乃利子さんが理由を訊ねてみると、信じられない答えが返ってきました。なんと、入社したときに、雇用保険の手続きをうっかり忘れていた、というのです。

「そんな……。だって、給与から毎月保険料を天引きしていましたよね?」

医療事務員として働いていた乃利子さんにまさかの事態が(写真はイメージ) (C)PIXTA

 こうした保険手続きや給与計算は、院長の奥様がすべて対応していたそうです。社会保険の手続きはされていたので、健康保険証は手元にありました。奥様は、雇用保険の手続きを後から行うつもりでいて、そのままになっていたことに気づかなかったといいます。

 失業手当(正式には「基本手当」といいます)は、雇用保険の被保険者で一定の要件に該当した場合に支給されます。乃利子さんは要件を満たしており、失業手当をもらえる十分な資格がありました。

 院長からは、雇用保険料として給与から天引きしていた保険料を返金し、退職金として10万円を支払うので、それで何とか勘弁してほしい、と言われました。奥様から何度も「ごめんなさい」と謝られました。

 院長夫妻に悪気がないことは乃利子さんも理解しています。しかし、「本当だったら、もっと失業手当がもらえるはずでは?」と、どこか納得のいかない様子です。