雇用保険は遡及して加入できる?

 辞めるときになって、事業主の手違いによって未加入が判明したら、大変なショックに違いありません。しかし、乃利子さんはこの申出を受け入れることはありません。

 事業主が雇用保険の加入手続きを行っていなかった場合、雇用保険は過去に遡って加入することができます。

 以前は、2年内の期間に限り遡及が可能でしたが、平成22年10月1日以降は雇用保険料が給与から天引きされていたことが明らかである場合は、2年を超えて遡及加入の手続き行えるようになっています。この場合、給与明細書や賃金台帳など、天引きしていた事実を確認できる書類の添付が必要です。

 乃利子さんには、こうした手続きが可能であることを院長に伝えてもらいました。すると、院長の奥様が、ハローワークですぐに遡って手続きをしてくれることになりました。

 失業手当は、ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があるにもかかわらず、職業に就くことができない失業の状態にあることが要件の一つとなっています。

 さらに、退職日以前2年間に、自己都合で退職するときは被保険者期間(*1)が通算して12カ月以上(*2)あることが求められます。

*1 退職日から1カ月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1カ月とする
*2 特定受給資格者または特定理由離職者は退職日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あること

 乃利子さんの場合、自己都合退職で被保険者期間が12カ月以上ありますので、90日分の失業手当がもらえることになりました。

 失業手当は、退職前6カ月の平均給与をもとに計算しますが、乃利子さんの場合は、1ヵ月あたりの平均給与が約22万だったので、失業手当としてもらえる総額は約45万円になります。