入社してから労働条件に変更があった場合

 募集段階で明示していた当初の労働条件と、入社時の労働条件が変更される、ということは時々起こり得ることです。あるいは、基本給が20万~25万円などのように範囲で金額が示されているようなケースでは、実際にいくらとなるか、明示してもらわないと分かりません。

「詳細は面談による」と書いてあったけど… (C) PIXTA
「詳細は面談による」と書いてあったけど… (C) PIXTA

 このように、当初明示した労働条件が変更される場合は、可能な限り速やかに、変更内容について明示することが、今回の職業安定法の改正により義務付けられました。

 当初の明示と変更された後の内容を対照できる書面があれば一番望ましいですが、労働条件通知書において、変更された事項に下線を引いたり着色したりする方法や脚注を付ける方法でも、求職者が適切に変更内容を理解できればよいとされています。

 変更明示が適切に行われていない場合や、当初の明示が不適切だった場合、募集企業は行政による指導監督や罰則等の対象となることもあります。

 職業安定法で最低限明示しなければならないとされている労働条件は、どれも今後働く上で重要なものばかりです。そのため、当初の労働条件に変更があった場合は、その内容を把握した上で、労働契約を締結するかどうか再考したいものです。

 もし、変更した理由について知りたいときは、会社へ質問してみましょう。職業安定法に基づく指針では、変更理由の質問を受けたときは、適切に説明を行うことを求めています。

 そして、労働契約を締結するときは、労働条件通知書又は雇用契約書の内容をしっかりと確認することです。労働基準法では、労働者を雇い入れる際に、一定の労働条件については書面で明示することを使用者に義務付けています(労働基準法第15条1項)。この内容は、労働者の募集を行うときに明示される内容と重なるものもありますが、退職や解雇事由に関することなど、募集時には明示されなかったことも含まれています。

 変更明示がされていないような場合は、この段階で「最初に聞いていた条件と違う」ということも起こり得る可能性があります。特に労働条件が労働者にとって不利に変更されているような場合は、注意が必要です。

 入社後に気持ちよく働くためにも、自分がどのような労働条件で契約を締結するか理解しておくことは、とても大切といえるでしょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA