「環境の中」にある傘を増やしていこう

 では一体、どんなものが私たちの「傘」になるのでしょうか。

 「例えば、自分の意見を聞いてくれる上司がいることや、新しい仕事にチャレンジをさせてくれる職場環境があること、目的意識を持って職務に取り組めることや、休んだときに自分の仕事をサポートしてくれる環境があることなど。当たり前のように受け止めていることでも、見方を変えれば、それが皆さんの傘になります」(河合さん)

「働き過ぎは、脳と心臓に負担をかけます。突然倒れたりすることのないよう、頑張り過ぎないで」
「働き過ぎは、脳と心臓に負担をかけます。突然倒れたりすることのないよう、頑張り過ぎないで」

 そして私たちの傘をしまっておく「傘置き場」は、2カ所あると河合さんは言います。

 一つ目の傘置き場は、「心の中」。心理学が追求する分野で、「自分に自信を持つ傘」や「ポジティブに考える傘」「楽観的に捉える傘」など、「自分が強くなるための傘」を置く場所です。

 「心の中の傘は、性格傾向に関係があるので、増やしたくても増やせない人もいます。また、心の中の傘だけで戦っていると、その傘が使えなくなったときに、心がポキッと折れてしまうことも。ですから心の中の傘だけで戦わず、皆さんには、『環境の中』にある傘も増やしてほしいと思っています」(河合さん)

 つまり二つ目の傘置き場は、「環境の中」。河合さんが専門とする、健康社会学が追求する分野です。

 「健康社会学の場合は、自分はへなちょこでもいいんです。しかし、『このチームなら頑張れる』『この会社にいれば前に進める』と、周りの力を借りることで、一歩前に踏み出してみようと思える。こうした環境や社会を目指し、環境の中にたくさんの傘を増やしていこうとするのが健康社会学です」(河合さん)

「傘の貸し借り」ができる職場づくりを

 自分が強くなるだけでなく、周りとの関係性や、環境の中で使える傘を増やす――。この新しい考え方に、会場にいる女性たちも、メモを取りながら真剣に話を聞いています。

 「困ったときに、『あなたの傘を貸してもらえませんか?』と言える勇気を持ってください。そして、それが言える人間関係をつくる努力をしてみてください。『最終的にはあの人の傘を借りられる』と思える人が、たった一人でもいたとしたら、それは自分にとって、とても大きな力になります」(河合さん)

 また同時に、「誰かに傘を差し出す勇気も持ってほしい」と、河合さんは続けます。

 「雨に濡れている人がいたら、“どうしました?”と声を掛けてみてください。たった一言、声を掛けるだけでも、相手にとっては大きな傘になることがあります。上司や部下、同僚といった立場を超えて、傘の貸し借りができる関係性。傘の貸し借りができる職場づくりを目指してほしいと思います」(河合さん)

自分が輝く秘訣は、周りを輝かせること。傘の貸し借りができる職場づくりを!
自分が輝く秘訣は、周りを輝かせること。傘の貸し借りができる職場づくりを!

 「自分が輝くためには、周りを輝かせるのが一番です。周りを輝かせると、自分もどんどん輝き始めます。そして、『挨拶』と『無駄』を大切に。挨拶は、心と心の距離を縮めるコミュニケーションの基本です。元気な会社には、必ず元気な挨拶が飛び交っているものなので、明日から早速、挨拶は習慣化してほしいと思います。また無駄な時間や無駄話も、心の距離を縮めます。効率が重視される世の中ですが、たまには無駄を楽しむことも大切です」(河合さん)

 「輝き女子」になるための具体的なメソッドを、いろいろと伝授してくれた河合さん。仕事帰りに駆け付け、講演を聞いてくれた女性たちの表情も、キラキラと輝いて見えました。