「悪役をやればやるほど人気が出る」なぜ?

 個人的には、悪役を躊躇なく演じ切っているところが人気なのではないかと思います。本当は嫌なのに苦しみながらやっているとこちらとしても応援しにくい。楽しんで演じているのが伝わってくるのがいいということはあるでしょう。

 また、悪役のほうが視聴者として、自分に近い存在にも思えるということもあるのではないでしょうか。ヒロインは、周囲に守られていたり、非の打ち所のないことも多く、そんなキャラクターにも憧れる気持ちはあるけれど、自分とは程遠いと思ってしまう人もいるものでしょう。また、ヒロインはポジティブなことが多く、何もかも良いほうに受けとったり、心の中の葛藤を出さなかったりするピュアな人が多いものです。

 けれど、悪役は、欲望に忠実で、自分の中のネガティブな感情も隠さないし、それをモチベーションに自分で道を切り開いていくことも多いし、間違っていたら報われないこともになります。そんな、ある種の人間らしさが逆に親しみやすさにつながっているのではないかとも思いました。

 そして、悪役にプライドを持って臨むことで、主役であっても脇役であっても、重要な役を演じるようになり、女優としても確実にステップアップしています。菜々緒さんは、「悪女と一口に言ってもさまざまなバリエーションがあり、メイクによって印象もガラッと変化する。だからメイクはすべて自分で。役によってミリ単位で変えています」と、シネマカフェ cinemacafe.netのインタビューでも答えています。自分で考え、納得いく仕事をして、それでステップアップしていて、そこに対して妙にへりくだったりもしない。そんなところも、人気の所以ではないかと思います。

 今年の菜々緒さんは、『A LIFE』だけでなく、大河ドラマ『おんな城主 直虎』にも出演することが決定しています。どんな役にキャスティングされても、見ている人をわくわくさせる存在は今のところ唯一無二だなと思います。

文/西森路代 イラスト/川崎タカオ