「変わった人」を温かく受け入れる

 マツコさんも見た目や雰囲気を見て態度を決めていますが、基本的には、自分が上の立場にあり、弱い立場になりやすい人には、キツく言ったとしても、必ずフォローを入れています。また、対等の関係である身内には厳しく、敬意を払うべきプロフェッショナルな人には、敬意を示しつつ、いじるときはいじるという基準を持っているように見えます。もちろん、その基準を外れることがあるかもしれませんが、今のところ、この能力があったからこそ、ここまでのスターになったのではないかとも思うのです。

 マツコさんの他人のいじり方にはもう一つ特徴があります。それは、ちょっと変わった人を突き放さないということです。

 マツコさんが出会う変わった人とは、『月曜から夜更かし』に出てくる街行く人たちや、『アウト×デラックス』に出演するゲストがそうでしょう。今までだったら空気が読めない、ちょっとテレビに向かないと思われていた人であっても、ちゃんと拾えば面白い、そして私たちも同じであるという空気を広めたのも、マツコさんではないかと思います。

 そこには、マツコさん自身も、今の世の中、どんな人にも人と違った部分はあるという認識と、そこに対するシンパシーが基本としてあるのでしょう。それは、うまくいけば、みんなが同じではないし、人と違っていてもおかしいことではないという認識につながるのではないかとも思うのです。

文/西森路代 イラスト/川崎タカオ