恋愛映画はヒットするがドラマは……

 しかし、それはお金を払っていく映画の話であるし、20億円のヒットを飛ばしても、観客動員数はおよそ150万人である。その数字であれば、ターゲットを絞って制作しても、十分届くべき人には届く数字である。しかし、テレビの規模は映画と同じではない。

 それなのに、テレビドラマでは、恋愛映画で好調だった企画やキャスティングをそのままに再現しようとするから、それが単純に視聴率に結びつかないことは明らかである。視聴率で結果を出せていない恋愛ドラマには、映画でヒットした枠組みをそのままテレビに当てはめようとしているものが多いように見受けられる。

2016年は恋愛ドラマの転換期

 2016年前半までは、恋愛ドラマ離れが叫ばれてきたが、『逃げるは恥だが役に立つ』がスタートしてからは、そんなことはないのではないかという空気が濃厚になってきた。実は、2016年全体を振り返ってみると、恋愛ドラマはけっこうたくさんあったし、変化の年と言えるかもしれない。登場人物にある特徴が見られるのだ。

恋愛ドラマの人気が戻ってきた? (C) PIXTA
恋愛ドラマの人気が戻ってきた? (C) PIXTA

 例えば1月に始まった漫画原作の『ダメな私に恋してください』のヒロインの柴田ミチコは、29歳で独身彼氏なし、そして若い大学生に貢いではいるものの、処女という役回りだった。

 4月にスタートしたオリジナル作品『世界一難しい恋』では、嵐の大野智演じる一流ホテル経営者である主人公は、仕事はできるが内面は子どもっぽく、恋の経験もほとんどなく、不器用に恋をしていく姿が描かれた。

 同じく4月スタートの『早子先生、結婚するって本当ですか?』は、同名のコミックエッセイが原作。松下奈緒がこれまでのイメージとは違うサバサバ系の女性教師を演じるが、この主人公も、恋愛の経験がたくさんあるような描写はなかった。

 『夢をかなえるゾウ』『人生はニャンとかなる!』を手掛けた水野敬也が原案の『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』のヒロインは、39歳でプライドの高いアラフォー。恋愛経験がないわけではなさそうだが、結婚できない現実を書いたドラマでもある。

 恋愛ドラマではないが、宮藤官九郎のオリジナル『ゆとりですがなにか』にもまた、松坂桃李演じる29歳で童貞の小学校の教師が登場する。

 そして、幾度となく映像化された『時をかける少女』は、恋愛というもの自体のない未来から来た研究者と、女子高生とその幼馴染のストーリーだが、三人とも恋を知らない。