2. 痛い批判は自分と向き合うべきというサイン

 私たちの批判への恐れは言い換えると、自分がダメだと思っていることを他者に立証されてしまうことの恐れです。例えば、A子さんは「頭の回転が遅い」ことがコンプレックスだとしましょう。改善のためにいろいろ努力しようと意気込んだ矢先に、上司からピシャリと「◯◯さん、そんなトロトロ考えてたらねぇ~、仕事が回ってかないから」と言われてしまいます。

 頭の回転が遅いのはダメだと思っているA子さんですから、それを指摘されることでひどく傷つきます。客観的にこの状況を見るのであれば、上司はA子さん自身のことではなく、単に「仕事ではスピード感が重要だ」ということを指摘したに過ぎないのです。

 批判を受けて傷つくのは「弱さ」と捉える人もいますがそれも違います。誰かの批判や指摘にひどく傷ついている自分がいたらそれは「自分自身への評価を再検討すべき」というサインです。例えばA子さんは自分が「頭の回転が悪い」と決めつけています。そして「頭の回転が悪いから自分は仕事人としてダメだ」という短絡的な結論を導き出しているのです。これが他人に対してだったらこうした思考が働くでしょうか? 頭の回転が遅いから仕事ができないと考えるのはあまりに理不尽です。

 多くの人は自分の欠点を自分で批判することが、何らかの改善や成長につながると思っています。その結果、多くの人が自分に優しくないのです。実際A子さんは頭の回転が遅いのではなく、あらゆるリスクをしっかり吟味した上でないと結論が出せないのかもしれません。熟読しないと気が済まないのかもしれません。実際のところ物事を深く考える傾向にあるA子さんは、仕事でのスピード感を重視する上司からは「ゆっくり」に映るということだけなのです。

[引用]過去に受けた批判の中でどんなことが尾を引いていますか? あなたが特に恐れている批判は何ですか? それは「失礼なヤツだ」、「仕事ぶりはまぁまぁいいが、いまいちパッとしない」、「怠惰だ」などと思われることでしょうか。自分が恐れている批判に気づくだけでいいのです。それはあなたの自己像について、また自分が持っている「自分は◯◯だったらどうしよう」という恐れについて、何かを教えてくれています。

 特に自分自身に対するネガティブな評価を疑うことをしてみましょう。あなたは自分自身を間違って理解しているかもしれません。自分自身への見方が支障をきたしているのであれば、それを変える必要があります。それは他人と向き合うことと同じです。「私は相手を誤解していないだろうか?」「この人は実際はどんな人なのだろうか?」といった問いを自分自身に投げかけてみましょう。些細なことのように思えますが、自分に対する考えを変えることで批判への恐れはなくなっていきます。

[引用]あなたがすべきことは外からの批判から距離を置き、自分自身に対してより正確で思いやりのある評価をすること。「自分はこうである」という思い込みを変えることで、それに関係する批判を極端に恐れたり、傷ついたりすることもなくなる。

 またここで重要なのは、批判を受けた時にあなたが反応しているのは批判をした人に対してではないということ。批判をした人は単なる鏡です。私たちは自分の不安や自分への厳しい評価を他人に投影しているに過ぎません。もし怒りなどがあってもいったん相手は外して状況を検証してみましょう。