2. あえて反対の立場をとってみる

 チームのメリットは、一人だけで物事を考えるときに生じる死角を減らせることです。つまり、チームで物事を考える方がより正確な判断ができるのです。しかし、私たちはいつも周囲に良きアドバイザーがいるわけではありません。そういったときに有効なのが頭の中で一人二役を演じることです。

[引用]心理学者はこのプロセスを「弁証法的自助」と呼ぶ。研究(*)によるとこれはさまざまな視点や考え方を取り入れる姿勢やあらゆる事実を考慮することを促すため、判断力を改善することができる。

 まずはある問題に対して自分が出した答えを疑ってみることからはじめましょう。自分の答えに対して、反対の意見を提示してみることで死角がないか確認するのです。

[引用]例えば自分が手がけている製品に必要なプロダクトの注文数を決めなくていけないとしよう。この問題に対する回答を一度書き出す。そしてこの最初の予測が間違っていると仮定し、それがなぜ間違っているか理由を考えてみよう。すなわち自分の意見に反対する人の視点で状況を見てみるのだ。二つの回答の論理をひとつひとつ自分に説明し、比較してみよう。

 相反する回答を考慮することで、より多くの視点に基づいて決断を下すことができます。一人で考えるときにどうしても生じてしまう落とし穴はこのように回避できるのです。

3. バイアスを外す

 誰しもが「◯◯はこうだろう」というバイアスを持っています。そして、時にこのバイアスが私たちの判断力を曇らせることがあります。例えば下記の質問について考えてみましょう。

[引用]向かい側にメガネをかけモーツァルトを聴いている男がいたとしよう。彼は文学部の教授かトラックの運転手のどちらだろうか? 前者を選んだあなたは心理学者たちが「基準値の無視」と呼ぶ状態に陥っている。「基準値」とは現状に影響を及ぼしている重要な因子が起こる見込みのことである。

 質問に対する正しい答えはなんでしょうか? 正解は後者の「トラックの運転手」です。理由は「文学部の教授よりもトラックの運転手の方が遥かに人口が多いから」というものです。

 ではこの「基準値無視」の現象を認識した上で、仕事での判断をどのようにアプローチすべきなのでしょうか?

[引用]ビジネスやキャリアでなんらかの決断をするとき、基準値を覚えておくことは有益である。ほとんどの本は出版されない。ほとんどのITベンチャーは失敗に終わる。ほとんどの修士号の持ち主は中間管理職以上にはなれない。これは落胆させるために言っているのではなく、無謀で非現実的なポジティブ思考から身を守る手立てとして提示しているのだ。

 決断を下す際に「基準値」を頭の片隅に置いておくことは有効です。極端にネガティブになったり、極端にポジティブになったりして状況を見誤ることを回避できます。ポジティブなときは「失敗もありえる」、ネガティブなときは「ものごとがいい方向に変わる可能性はないか」という考えを持っておきましょう。