この連載では翻訳・通訳者の相磯展子がNY発Webby Awards受賞サイト99Uや英語圏サイトのライフコーチ、ビジネスパーソンなどの仕事のノウハウを紹介。30代女性が仕事で直面する悩みや課題に立ち向かうためのアイデアやヒントを発信していきます。

 私は最近仕事で「失敗」をしました。しかし、それを受け入れ、事態を振り返ってみてあることを思いました。それは、失敗に伴う恐れや不安をくぐり抜けてこそ、得られる気づきや成長があるということです。

 多くの人と同様に私も失敗に対して抵抗感があります。できることならなるべく失敗は避けたいものです。なぜなら、それに直面した時は自分が能力不足を突きつけられている気持ちになるからです。私は子どもの頃から完璧主義なところがあり、失敗することが大嫌いでした。そんな私が失敗をありがたいと思えるようなったのです。

 失敗のトピックになると、私はいつも世界的ブランドSPANX(スパンクス)の創業者Sara Blakely(サラ・ブレイクリー)の話を思い出します。Blakelyはブランドを立ち上げ当初、靴下業界での経験どころか、ビジネスの経験もなく、それに加え、資金はわずか日本円で55万円相当しか持っていませんでした。彼女の逆境に打ち勝つ原動力となったのは父の教えでした。Blakelyは子ども時代に父親が実践していた常識はずれの教育法について、ABCニュースのインタビュー(*)で明かしています。

[引用]夕食の席につくと「今日はどんな失敗をしたの?」と父に聞かれました。私が「このスポーツのチーム選抜に行ってみたんだけど、ひどい出来だったのよ」と答えると、父は「いいぞ、よくやった」と言ってハイタッチしてくれました。この習慣が私の失敗の捉え方を完全にリセットしてくれました。私と弟にとっての失敗は「結果」ではなくむしろ「挑戦しない」ことを意味するようになりました。このようにBlakelyの父親は「失敗」をプラスに捉える教育を子どもたちに施していたのです。

「失敗」を嫌う社会

 仕事でのパフォーマンスなどに焦点を当てたインタビュー番組Unmistakable CreativeのCEO、Srinivas Rao(シュリニヴァス・ラオ)はある投稿(*)の中で、社会の「失敗」の捉え方を端的にまとめています。

[引用]社会はロースクールや医大に行くことなど結果が保証されている事柄については粘り強い頑張りを奨励する。しかし、結果が不確か状況で頑張りを続けている人は、成功しなければ称賛されず、失敗すると冷ややかな目で見られるものだ。

 私たちの社会では、成功のみが称賛されます。そして、その裏にある数々の失敗は美化されるか、見過ごされてしまうのです。本来はセットである成功と失敗がこのように切り離されてしまったとき、私たちは成功と失敗は相入れないものだと勘違いし、失敗を排除しようとするのです。

 しかし、誰もがBlakelyのように自らの失敗をメダルのように掲げることができたらどうでしょうか? そうできれば私たちは「失敗したらどうしよう」というつまらない恐れにつまずくことなく、いろいろなことに挑戦するでしょう。