アメリカで注目が集まっている“ハピネス研究”を知っていますか? この分野では、「働く人の精神がどのように仕事に影響するか」についての研究が盛んに行われ、それが実践の場でも取り入れられています。これは仕事で感情を出すことをタブーとしがちな日本とはずいぶん違う考え方です。本連載では、翻訳・通訳者の相磯展子が、「ハピネス研究」をはじめとする海外の仕事観を紹介しながら、日本の仕事の常識に疑問をぶつけていきます。違った視点に触れることで、悩みを解決するヒントがきっと見つかるはずです。

科学的にも証明された「自分への思いやり」と成功の関係性とは? (C)PIXTA
科学的にも証明された「自分への思いやり」と成功の関係性とは? (C)PIXTA

 一般的に「自分に厳しい」ことは美徳とされています。自制心を持って常に高みを目指す姿勢は尊敬を集めます。それは、私たちの多くが自分に厳しくすることが、「勤勉」「野心的」「責任感がある」「慎重」といった特性とつながっていると考えているからです。

 しかし、研究では、「自分への思いやり」(セルフ・コンパッション)が仕事における成功につながるという、逆のことが指摘されています。スタンフォード大学CCARE(Center for Compassion and Altruism Research and Education)のEmma Seppala(エマ・セッパラ)博士は、自分に厳しく接することよりも、思いやりを持って接するほうが、より良い結果を生むことを指摘しています。

[引用]セッパラは自著の中で、意外にもハッピーでいることが成功への道であることを主張し、中でも自己批判の害と、自分への思いやりのメリットを強調している。Seppalaは「思いやり」という言葉が「軟弱」「非科学的」という印象を与えることを真っ先に認める一方で、キャリアでの成功において自分との関係が、他者との関係と同じくらい重要であることを示唆する近年盛んに行われている研究を引き合いに出している。つまずいたり、失敗したりしたときに自分に厳しく接することは再び失敗を招く。自分に優しく接すれば、次からのパフォーマンスが向上する可能性が生まれるのだ。
(Businesse Insider 「A Stanford scientist says a simple psychological shift can make you more successful」より)