アメリカで注目が集まっている“ハピネス研究”を知っていますか? この分野では、「働く人の精神がどのように仕事に影響するか」についての研究が盛んに行われ、それが実践の場でも取り入れられています。これは仕事で感情を出すことをタブーとしがちな日本とはずいぶん違う考え方です。本連載では、翻訳・通訳者の相磯展子が、「ハピネス研究」をはじめとする海外の仕事観を紹介しながら、日本の仕事の常識に疑問をぶつけていきます。違った視点に触れることで、悩みを解決するヒントがきっと見つかるはずです。

 難しい仕事を前にしてたじろいだことはありませんか? こんな時、無理に集中しようとすることはあまり効率良くありません。

 産業・組織心理学者のMarla Gottschalk(マーラ・ゴッツチョーク)博士は次のように述べています。

[引用]やっかいな問題について十分な休みもなく、長時間集中し過ぎると、その努力は失敗に終わる可能性が高い。やっとギア・チェンジをして、「休む」モードになった時に解決策が浮かんでくるものだ。
(Marla Gottshchalk 「One Smart Way To Solve Tough Problems: Don't Bully Your Brain」、2014年)

休んでいる間も脳は活動している

 ニューヨーク大学のLila Davachi(リラ・ダヴァチ)博士は、ぼーっとしている時でも脳が活動していることを突き止めています。

[引用]一部の脳の活動は、意識が休んでいる時に活性化し、記憶定着と強い相関性を持っている、という研究結果をニューロン誌に発表したDavachi博士は「一見休んでいる時でも、脳はあなたのために働いている」と指摘する。また「脳を休めることは仕事や学業の成功につながるかもしれない」と付け足す。
(TIME誌 「Studies: An Idle Brain May Be Ripe for Learning」、2010年)

 カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究グループが発表した論文では、むしろ休んでいる時の方が脳の活動が活発であることが指摘されています。

[引用]「ぼんやりすることは、怠慢、注意散漫といったネガティブなことと結びつけられがちだ。」と、研究論文の第一筆者であるブリティッシュコロンビア大学心理学科のカリナ・クリストフ教授は述べる。「しかし、この研究はぼんやりしている時、脳が非常に活発に活動していることを証明している。それは習慣化されたタスクに集中している時よりもずっと」。
(ScienceDaily 「Brain's Problem-solving Function At Work When We Daydream」)