「繊細な人=内気、神経質」は単なる偏見

 Aronいわく、HSPの人は「内気」「感情を表さない」「こわがり」「神経質」と言われがちですが、これらはすべて後天的に習得された特性です。実はHSPの30%は外交的であることが分かっています。HSPは周囲のネガティブな反応によって、上記の習性を身につけてしまうことはありますが、それは本来の特性とは別のものです。つまり、HSPに対する「内気」「神経質」といったネガティブなイメージは単なる偏見に過ぎないのです。

HSPは環境次第で優れた能力を発揮する

 HSPの人は単に欠点を抱えた人なのでしょうか? どんな特性もそうであるように、HSPにはメリットも、デメリットもあります。HSPの場合は、良くも悪くも環境に影響を受けやすいという点が挙げられます。「ハイ・センシティビティー」(強い感受性)についてのトーク(*)で、Aron博士はいくつかの研究成果を引き合い出しています。今回はその中の2つを取り上げたいと思います。

 Stephen Suomi(スティーブン・スオミ)博士が実施したアカゲザルの実験は、特に興味深い発見につながっています。Suomi博士はアカゲザルの群れをストレスに過敏な「内気(uptight)なサル」と「どっしり構えた(laid-back)サル」との2つに区別しました。そして、生まれたばかりのサルの子を母親から離し、代理の優れた母親(highly-skilled mothers) 、もしくは普通の母親(ordinary mothers)に育てさせたのです。その結果、優れた代理の母親に育てられた内気なサルは、後に群れのリーダー格に成長しました。

 Aron博士は、「このようにHSPは極めて有利な特性なのである。その理由から非常に敏感であることは喜びである」とも述べています。

 実は同じような結果が人間の子供でも見つかっています。人間に異なる感受性の度合いがあることを意味する「感受性差異(differential susceptibility )」の概念を提唱したJay Belsky(ジェイ・ベルスキー)博士とMichale Pluess(マイケル・プルエス)博士は、いわゆる感受性が強く、ネガティブで、扱いにくいと思われる子供は、良い環境の中では周囲よりも優れた能力を発揮することを発見しました。