[引用]めまぐるしい変化の中に置かれている私たちは素早くソリューションを提示できる者を称賛したがる。簡単な解決策は、理にかなっているように思えるし、安心感をくれる。しかし、こうした解決策はお腹が空いた時に一番近くにある食べ物にとりあえず手を伸ばしているのと同じなのだ。時には前もってメニューを考えておくことがプラスになる場合もある。私たちはなぜ一度立ち止まって問題自体を疑うことをしたがらないのか? それは答えを出すプロセスを遅らせることが、表面上は自分より権力を持つ者を刺激する要因であり、弱さを意味するからだ。

本当に難しいのは「答え」を出すことではなく、適切な問題設定をすること

 スタンフォード大学でのレクチャー(*)の中で、Instagramの共同設立者の一人Kevin Systrom(ケビン・シストラム)は問題解決について示唆に富んだ分析を行っています。それは、問題解決においてソリューションを見出すことよりも、適切な問題設定をすることの方が難しいという指摘です。

 Systromは以下のように述べています。

[引用]我々はユーザーが抱える問題に向き合うわけですが、その中でどんな問題に取り組むかははっきりしていて、チャレンジングなのは解決策となるアルゴリズムを見つけることだと思っていませんか? 大変なのは解決策を見つけ出すことだと。しかし、フタを開けてみると解決するべき問題を見つける方が難しいんです。全ての問題とは言わないまでも、大半の問題は比較的容易に解決策を見出すことができます。

 Systromの指摘が正しいならば、問題への答えがいっこうに出ない場合は、問題設定が間違っている可能性があるということです。 私たちは与えられた課題への答えが出ない時、無理に何かを絞りだそうとしますが、こうした状況においてはむしろ問題設定を問い直すべきなのです。

ソリューションを導き出すためのステップ1:問題の背景を知る

 さて、実際に問題検証をする時どういったアプローチを取るべきなのでしょうか? また、問題の真相を突き止めるにはどうすべきなのでしょう?

 Brooksはまずは問題から距離を置きさまざまな角度からそれを検証することから始めるべきだとしています。下記はBrooksが紹介しているアプローチ方法です。

[引用]
・問題の裏にある前提(自分のものも含め)を疑う
・ターゲット層のニーズをもっと細かく理解する
・大局的な見地から問題を見たらどうだろう? 大きな目で見た時にその問題がもたらす影響を抽出してみる
・他の人がそれぞれどのように問題を捉えているかを十分理解する

ソリューションを導き出すためのステップ2:問題設定をブレーストーミングする

 問題の背景に関するあらゆる情報に触れたら、やっとブレーストーミングの時間。しかし、まだソリューションについては考えません。まずは問題設定をブレーストーミングするのです。筆者はWarren Berger(ウォーレン・バーガー)が『A More Beautiful Question』の中で紹介している質問形成テクニックQFT(Question Formulation Technique)を紹介しています。

[引用]
1. チームの一人をセッションリーダーに任命する
2. セッションリーダーがブレーストーミングのためのテーマを設定する(例:モバイルにおける写真の未来について)
3. チームは10分間でできるだけ多くの質問を考える(「何□□を妨げているのか?」、「何が□□食い止めているのか」、「なぜ□□なのか?」など)
4. チーム内で2人組になり、さらに10分間質問を共有し、ブラッシュアップする
5. 2人組でさらに5分間かけて、質問の優先順位を決め、チームに発表する
6. チームで実際に追求する質問を3つに絞り込む
50個ほどの質問ならチームで容易に考えられるはず。そこから質問を3つに絞り込むのだ。

ソリューションを導き出すためのステップ3:問題を定義し、解決策を探る

 普通の人ならすぐに手をつける答えを出す作業がやっとここで入ってきます。この段階ではチームメンバーのクリエイティビティーを掻き立て、アイデアを促す質問が3つ揃っているはずです。そして、この質問を通してさらなる実験、リサーチや話し合いを行います。このプロセスを経て最終的には「Problem Statement(プロブレム・ステートメント)というものを導き出すのです。

[引用]プロブレム・ステートメントとは、あなたとあなたのチームが取り組むべき問題の簡潔で明快な定義のこと。具体的には下記のフォーマットに落とし込みます。
1. ヴィジョン―問題解決後の状況
2. 問題提起―具体例を用いた問題の記述
3. 方法論―どうやって問題を解決するか

 ここで例としてInstagramのプロブレム・ステートメントを見てみましょう。

[引用]
1. ヴィジョンーすべてのユーザーがとても美しく撮れた自分の写真をスムーズにアップでき、みんなが邪魔なくコメント、シェアできる場を作りたい
2. 問題提起―現在、撮っている人の視点の本質を欠いた低解像度の写真を扱うアプリが多すぎる。テキストメッセージ上だとアップロードや送信に膨大な時間がかかり、友人や家族と写真を共有するのが困難
3. 方法論―人間中心のデザインプロセスを用いて、ユーザーの本当のニーズを突き止め、スマートな開発手順を活かし、常にサービスを向上させていく

常に問いを投げかけ、好奇心を持つこと

 「私が特に頭がいいというわけではなく、単にある問題について普通の人より長く考えているだけのこと」と述べたのはアインシュタイン。これからも問題と向き合うことがいかに重要かが伺えます。

[引用]どの業界でもなんらかのクリエイティビティーを伴う仕事は、問題発見のスキルが必要不可欠である。そのプロセスは、他の人が見過ごしてしまうようなさまざまな可能性に気づかせてくれる。

 Brooksがもうひとつ指摘するのは、問題発見にとって好奇心、そして常に物事の本質を問う姿勢がいかに重要かということです。目まぐるしく変化する世の中に適応していくためにはこうした積極性、柔軟性を維持することが必要です。

 これは守りに入ってしまってはできないこと。物事を「枠内に収める」ことも重要ですが、それと同じくらい「枠の外から出る」ことも重要なのです。

 みなさんはいままでどのように問題解決をアプローチしてきましたか? この機会にこの方法論を試してみてはいかがでしょうか?

99U「Brainstorm Questions, Not Solutions」」(Levi Brooks著)をもとに翻訳、再構成