「深い仕事」と「浅い仕事」とは?

 Newportが言及しているこの2種類の頑張りとはいわゆる「深い仕事」と「浅い仕事」と言われるものです。著者によると「深い仕事」とは「邪魔されず集中することと、再現が難しいスキルを用いることを必要とする高い認識力を伴う作業」のこと。それに対する「浅い仕事」とは「深い集中力や再現困難なスキルを必要としないシステマチックな作業」を指します。

 具体的にはメーリングリストに賛成の意見を送るのは「浅い仕事」に該当し、出版を控えている本の1章を書き上げることは「深い仕事」に該当するのです。

 もうお分かりかもしれませんが、実は大きな結果を生むのは後者の「深い仕事」の方です。

[引用]「浅い」作業が本質的に悪いというわけではないが、それらは技能を必要としない労働であるため、価値を生み出すためのあなたの努力に(良くても)少ししか貢献していない。

 価値ある仕事をするには、時間と集中力が必要不可欠なのです。メールの返信やソーシャルメディアでのやりとりなどの「浅い仕事」によってそれが中断されることは想像以上に大きな痛手を伴うことを上述の2人は深く認識しています。Newportが指摘するように、2人は「深い仕事」を優先させるため「浅い仕事」をスケジュールから取り除いているとも言えるのです。

この知識をどう活用すべきか

 もちろん私たち全員が科学者や作家ではありません。そして彼らのように「浅い仕事」を取り除くことができないこともおうおうにしてあります。しかし、意味のある仕事をしたいのであれば「深い仕事」をする時間を確保することは必須です。

[引用]価値あるものを生み出したいのなら、「深い仕事」を中心に据えなければいけない。そのためにはおそらくFeynmanやStephensonのような「怠惰さ」が必要になってくる。つまり、ある仕事がどんなにたくさんの小さなメリットを保証してくれても「深い作業」からあなたを遠ざけるものであるのなら怠惰な警戒心を持って対応する必要があるのだ。

 また、このアプローチは自分の仕事の優先順位を考え直す意味でも重要な視点を提示しています。あなたの仕事において最も大事なタスクはなんでしょうか? メールを返信することでしょうか? 同僚と世間話をすることでしょうか? 答えが出たら仕事の仕方を変えてみましょう。

 「浅い仕事」は手軽にでき、すぐに満足感を得ることができますが、実際にそれが価値ある仕事につながるかはクエスチョンです。私たちは焦りを感じるとつい「浅い仕事」から手をつけがちです。いくらやっても達成感がないのは「浅い仕事」で忙しくしているからかもしれません。

 また、忙しくてなかなか一番大事な作業に手が回らないといった感覚も、「深い仕事」の重要性を軽んじていることから生じます。つまり、「深い仕事」をするのに必要な時間と集中力を確保していないのです。

(もしくは、集中力、エネルギーを必要とする「深い仕事」を避けるために無意識に「浅い仕事」で自分を忙しくさせているのかもしれません。)

 Newportは最後に常識外れのアドバイスで自らの主張を締めくくっています。

[引用]言い換えれば、連絡をつきづらくし、新しいツールは避け、メールの返信は急がず、流行に対しては知らぬが仏でいよう。相談ごとの申し入れ、電話会議への参加は断り、何日もかけて一つのアイデアを追求するということをしてみよう。こうした「怠惰な」行動こそが世界を変えていけるのだ。

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 私たちはありとあらゆる刺激の中で暮らしています。そんな環境で一番難しいのが長時間集中すること。受信音が鳴ったらすぐさまそれに反応していませんか? すばやい返信は周囲からは喜ばれるかもしれませんが、そこであなたは価値ある仕事を生み出す機会を失っているかもしれません。

 やれることは万とあるかもしれませんが、最もやるべきことは何でしょうか?マルチタスキングや1日の中にありったけのタスクを詰め込もうとするのはやめましょう。意味のあることは時間を要します。言い訳をやめ、集中できる時間を確保してみてください。生産性がアップするのを実感してみましょう。

99U「Want to Create Things That Matter? Be Lazy.」(Cal Newport著)をもとに翻訳、再構成