女性幹部候補の研修では森林での伐採体験も

――どういった内容のプログラムなのでしょうか。

牛島:将来、幹部社員として活躍が期待できる女性社員を毎年15名ほど選抜し、職場を牽引していくための意識改革や能力開発を行うものです。3チームに分かれてテーマを絞り、新たなビジネス創造について議論を重ねたり、フィールドワークをしたりします。例えば、昨年度行われたプログラムで、あるチームは「日本の森林の活性化」をテーマに掲げ、直接ヘルメットをかぶって山奥に入り、チェーンソーで枝を払う作業を実体験しています。もちろん彼女たちのアイデアです。女性たちの行動力にはいつも驚かされますね。男性はなかなかそこまではやらないですよ。

――チェーンソーを使って自ら伐採体験をしようという発想は、非常にアグレッシブですね。最近、女性経営幹部育成のプログラムを導入する企業は増えましたが、通常は座学が中心のところが多い。なぜ富士通エフサスではフィールドワークを重視されているのでしょうか。

牛島:この会社に根付いたDNAの部分も大きいと思います。みんなどうしようもなく現場主義ですし、机上で話し合うだけではイノベーションは生まれないという考え方から、研修でフィールドワークを重視しています。他にも、WLPの一環として、意識的にさまざまな経験を積ませています。例えば、経営陣との打ち合わせにあえて連れていったり、重要な会議に同席させたりする。いわゆるシャドウイングですね。育成責任者として、男性の統括部長クラスがつく形になります。

チェーンソーで枝を払う作業も経験
チェーンソーで枝を払う作業も経験

――今回で3期目になるわけですが、これまでプログラムを受講した女性たちの変化はいかがでしょうか。

牛島:職場のアンケートによると、より一段の成長を遂げたと、ほとんどの上司が認めています。発言の内容や視点が変わっただけでなく、自信がうかがえるようになったと。また、研修中は自分の仕事を部下に振らないといけないわけですが、女性は責任感が強く、仕事を抱えがちなケースも多い。実際に任せることでマネジメント力向上につながるのはもちろん、「想像していた以上に周囲が頑張ってくれる」ことを感じたという声を聞きます。

――今の発言にあった女性の「自信」ですが、日本では女性の自信のなさが昇進のネックになっているともいわれます。今年、日経BPが実施した働く女性対象の調査でも、「将来管理職になりたいか」との質問に、40.6%が「なりたくない」と答えています。その理由は、「リーダーシップを取る自信がないから」が38.6%となっており、4割の女性が自信がないために昇進したくないと答えています。これは男性との違いだと思いますが、では、どうすれば、自信は養われると思われますか。

牛島:やはり経験だと思いますね。入社当時は、男女とも同じような強さを持っているはずですが、男性は、いろんな試練や役割を与えられることで鍛えられていく。ですから、女性に成長してもらうには、試練も与える必要があると思っています。これは当社の人材育成の理念「人間成長の経営」にもつながります。人が集まって、一つの目標に向かって一緒に仕事をする。その最大の喜びは、やはり「成長出来ること」だと思います。あらゆる活動の基点に人間成長があるべきです。