98年、女性たちからもらった言葉が女性活躍の原点に

――改めてですが、JCOMにダイバーシティが必要な理由を教えていただけますか。

:当社は95年に設立以来、40回以上もM&Aを繰り返し、今や約1万4000人もの社員を抱える企業となりました。従業員規模は大幅に拡大し、多様な人材の集合体になった。その多様な価値観、経験を生かすにはダイバーシティマネジメントが必須だと考えています。

 さらに、日本の人口減少や労働人口減少の問題から、今後「フルタイムで働ける日本人男性」だけではなく、女性・障がい者・高齢者・グローバル人材など、さまざまな人が実力を発揮し、活躍できる環境を作ることは、これからの企業の成長に欠かせません。そういった理由から、15年から「ダイバーシティ推進」を経営方針として掲げています。

――女性活用における目標設定とロードマップはいかがでしょう。

:2020年までに女性管理職比率を17%(15年は13%)に、女性ライン長を18年までに70人(15年は34人)にする、という目標を掲げています。

――そのひとつの施策として先ほどの次世代女性リーダー育成研修を実施したわけですね。

:14年からワークライフバランスに力を入れ、ライフイベントがあっても働き続けやすい環境は整備してきました。例えば、事業所内保育所の設立や、短時間勤務の利用をお子さんが小学校6年生までに延長するなど、制度も改正しています。そして現在は、「働きやすさ」ではなく「働きがい」に焦点をあて、キャリア開発に注力しています。

 女性対象の研修も、経営幹部候補対象、ライン長候補対象とそれぞれ研修を実施していますが、なかでも、次世代女性リーダー育成研修は、特に効果があったのではないかと考えています。

研修の参加者は番組制作、技術、営業、カスタマーセンターの4つの現場を経験
研修の参加者は番組制作、技術、営業、カスタマーセンターの4つの現場を経験

――仕事上で女性の力を実感された経験はいつでしょうか。

:98年くらいだと思いますが、私が日本移動通信(IDO)にいたとき、名古屋支店の社員活性化プロジェクトを任されました。当時、携帯事業が始まったばかりで、コールセンターを中心に女性が多く活躍していましたから、女性だけのチームを立ち上げてはどうかと考え、営業チームと顧客対応チームを発足。それぞれ6人の女性社員を私自身で選抜しました。若手社員でしたが、彼女たちの活躍は目覚ましく、非常に優秀でした。現在はコンサルタントとして起業している方もいます。そのときの経験が大きいですね。

――その経験を通じて女性を引き上げるには何が必要だと思われましたか。

:会社がミッションをきっちり与えること。そうすれば、男女関わらず、力を存分に発揮してもらえるのだとわかりました。女性の場合は特に顕著ですよね。そして、誰かが彼女たちの背中を押してあげることが必要だと思います。女性は上にいこうと思っていない人が多いですから。

 98年のプロジェクトが終わったとき、皆に感想を書いてもらいましたが、「壁がとれた」とか、「自分に自信が持てるようになった」という意見が多かった。刺激的な体験をすることで、キャリアに対する意欲がぐんと上がることを実感しました。それが、女性活躍推進の必要性を実感した私の原体験です。その感想を書いてもらったシートは自分にとって大切なもの。今でもファイルに入れて保管しています。