組織のなかで、「あ・うん」の呼吸はない

――女性活躍について制度は整っているのに、その制度が活用されていない、または制度を使えるようなムードではない。女性活躍を阻害するような企業風土を改めることに苦慮している経営トップが多いようですが。

川崎:まさにそうだと思います。女性社員にも、企業風土改革をやっていかないといけないとも伝えました。創業130年以上になると、過去にこうやっていたから踏襲すればいい、言われた通りにやればいい、という風土になりがちです。そして、結果が悪かったとしても、仕方ないと。それでは、ダメですよね。変化していくんだ、自ら変えていく事が必要なんだと繰り返しました。そして、そういった風土を変えていくには、意見を発信してくださいと。

 意見を「言う」「言える」「聞く」風土づくりについては、3年前から行っています。これはコンプライアンスにもつながっていくはずで、不正の芽があったり、少しでもおかしいと思ったら言える環境がないとダメ。女性活躍を進める上でも、例えば「女性は頼まれ仕事だけやっていればいい」という上司がいたら、「おかしいんじゃないか」と声をあげてほしい。そして、「私はもっとこういうことがしたい」と主張して欲しい。それに対して上司も部下の意見を聞き入れ、ミッションを明確に伝える責任があります。組織のなかで、「あ・うん」の呼吸はないですからね。きちっとコミュニケーションをとることから始めないと、組織の活性化はありえないし、活性化していない企業からはイノベーションは生まれませんから。

――企業の風土を変えるためにも男性管理職層の意識変容が必要だと言われていますが、どのような施策を取っていますか。

川崎:当社の場合、勤続年数に男女差はなく、長く働き続けられる環境はあります。しかしながら、主要なポストに女性が少ないのは、そもそも女性社員の母数が少ないこともありますが、これまで男性上司が女性社員にあえて期待を伝えたり、活躍の機会を与え、上に引き上げていくことをしてこなかったことも影響している。そのため、まずは管理職に対し、女性活躍推進の理解促進を目的とした研修を実施しています。そこでは、色眼鏡をはずし、男女関わらず部下一人ひとりの力を生かすことが必要だということ。女性社員ともっとコミュニケーションをとって、直接期待を伝え、鍛えてほしいと伝えています。

 2015年6月から開始しましたが、すでに1000人以上の管理職が参加。今後も継続して実施し、女性部下がいる・いないに関わらず、全管理職の参加を目指します。

――実感されている効果はありますか。

川崎:先に申し上げたように女性の活躍事例は増えており、社内報などで情報を公開することで、少しずつですが女性社員の意識改革に繋がっています。人の育成には時間がかかるため、成果はすぐには出ないもの。しかし、毎日1センチずつでも伸びていけば、1年で365センチも成長する。女性活躍推進も、ポリシーを持って地道に行動を継続していくことで、未来は変わるはずです。

インタビュー/沖電気工業株式会社(OKI)川崎秀一代表取締役社長 インタビュアー/麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員