徹底した業績評価で力のある女性を積極登用

――日本の会社に女性リーダーが少ない理由として、女性の自信のなさが指摘されています。ベルチ社長は10カ国で働いた経験がありますが、日本の女性の特徴や特質について感じられることはありますか。

ベルチ:もし日本の女性に自信がないとすれば、それは日本社会での女性の役割やとらえ方が影響しているのではないかと思います。女性自身にとっても社会的にも、「女性は家で子どもの面倒を見るもの、男性は外で働くもの」という認識がまだあるのでしょうね。それと、女性がもっとキャリアアップしたいと思っていても、それを実現するツールがないという現状もあります。こうした課題を克服するために、当社は女性を二つの形でサポートしたいと思っています。一つは業績評価についてです。当社では業績を評価するとき、年齢、性別、出身国などはまったく考慮しません。勤務時間も関係ありません。成果主義に基づく明確な業績評価の指標を作り、全員同じ指標で評価します。その評価に照らし合わせて、役職への昇進を決めています。透明性のある業績評価を行うことで、「女性だから」「若いから」といった偏見を持ち込めないようにするのです。

 もう一つは社内のマインドセットを重視しています。私自身も幼い娘を持つ、働く父親です。朝は早く起きて娘の面倒を見ますし、夕食も一緒にとるようにしています。娘が寝ているときにEメールのチェックをするんです。そういう柔軟な仕事の仕方を受け入れるマインドセットの変化が必要だと思うからです。私もできるんだから社員もできますよ、ということを示しています。女性も自信がないと思わずに、勇気を持ってマネジャーに「柔軟なワーキングスタイルを受け入れてください」と言うべきですね。

――女性社員の自信をつけるために、送っているメッセージや行った施策はありますか。

ベルチ:「それぞれが自分の人生のCEOだ」と言っています。誰もが自分で人生をコントロールすべきなんです。だから保守的な意見を持っているマネジャーがいたとしても、勇気を持って意見を言ってほしいと話しています。育児サポートや柔軟な勤務時間といったツールはどんどん活用して、さらに必要な制度があれば声を上げてほしいです。

 女性に自信を持たせるために一番いいのは、同じような境遇を経験した人たちとネットワークをつくることだと思います。そこで、当社ではウィメンズ・リーダーシップ・イニシアチブ(WLI)という社内活動を行っています。これは参加者のリーダーシップを伸ばすためのフォーラムで、女性がリーダーとして仕事をする上でぶつかる問題を理解し、解決策を見出すのが目的です。支店や部署、性別を問わず参加可能で、現在のメンバーは男性を含む75人。毎月1回、テーマに沿ってディスカッションを行ったり、コーチングしたりします。

社内ではダイバーシティに関する様々なワークショップが行われている。スピーカーはWLIのリーダーであるドーン・ディキャンディーロ氏
社内ではダイバーシティに関する様々なワークショップが行われている。スピーカーはWLIのリーダーであるドーン・ディキャンディーロ氏

――女性管理職比率の数値目標を設定しているのでしょうか。それを達成するためにどのような施策を行っていますか。

ベルチ:2010年に12.9%だった女性管理職比率は、現在17.7%にまで伸びています。少ないのでは?と思われるかもしれませんが、日本法人には約3200人の社員がいますので、5%の増加は非常に大きい。2015年末には18%、2020年には30%を目指しています。いつまでに何人の女性リーダーをつくるか、会社として具体的な数値目標を掲げ、各階層のリーダーごとに設定しています。目標達成のためには、業績評価に基づいたポテンシャルのある女性社員の選抜と育成と同時に、社外からの採用にも力を入れています。社外からの管理職採用に関しては、男性候補者に偏りがちになるため、資格を満たす女性候補者を積極的にサーチして、面接に加えるようにしています。