相談窓口「ピアサポーター」設置。
女性管理職もサポーターになり女性の後輩に助言を

――さて、次に日立グループ会社として女性活躍の足並みをどうそろえるかですが、日立グループの場合は、日経ウーマンの「企業の女性活用度調査」の枠組みを使って日立グループ内主要30社でランキングをしていますね。これはどのような効果をもたらしていますか。

北原:ランキングの結果が日立グループ社長会で報告されますから、よい刺激になっていますし、さらに上をめざして頑張ろうというモチベーションにもつながっていますね。外部評価は励みになります。管理職の女性比率も少しずつ増えており、部長職以上では26人(2015年12月現在)。2015年の「人を活かす会社」調査(日経新聞社主催)では、前年114位から大きく順位を上げ、26位となりました。

――グループの中でも女性本部長が多いということを聞いたことがありますが。

北原:本部長は6人います(2015年12月現在)。当社の女性管理職比率は3.6%なんですが、女性部長比率は3.0%、女性本部長比率は4.7%で、確かに本部長比率は高いですね。日立グループは、女性幹部のネットワーキングにも熱心です。日立グループ各社の部長職以上の女性を集めた「女性リーダーミーティング」は13年から始まりました。2015年度は、参加者146人の女性部長職以上のうち、当社からは22人が参加し、日立のグループ会社内で最も数が多かったと聞いています。

女性部長・本部長が集まって記念撮影
女性部長・本部長が集まって記念撮影

――参加した女性部長からは、どのような声が挙がっていますか。

北原:「同じようなポジションの女性が周りにいなかったので、グループ内でネットワークができて非常によかった」「日立の社長から直接“さらに上をめざしてほしい”とメッセージをもらい、刺激になった」という前向きな声が聞かれました。グループ全体のネットワークが構築されることで、さまざまなロールモデルを部下に紹介できるなどの効果が出てくるといいですね。

――今後、上をめざす女性たちを育成していくには、何が必要だと思いますか。

北原: 直接的な施策ではありませんが、3年前に「ピアサポーター」という相談窓口を設置しました。これは、経験豊かな社員の中からピア(Peer=仲間)サポーターを選任して女性に限らず誰でも、さまざまな相談に乗ってもらう制度です。当初、相談窓口の担当には男性しかいかなったのですが、女性が悩んだとき、女性の先輩から助言を受ける仕組みがあればいいと思い、2014年4月には2人の女性管理職を加えました。ダイバーシティ推進センタの青木明美センタ長もピアサポーターの一人です。仕事で壁にぶつかった女性社員が有益なヒントを得るきっかけになればと思います。実際、女性からのキャリア相談が多いと聞いてます。

――これまで進めてきた女性活躍推進で生まれたビジネス上の効果を教えてください。

北原: 女性が自らの視点を生かし、活躍するという意味では、子育て経験がビジネスに結び付いた例も出てきました。働くお母さんを応援するサービスとして生まれた、自治体向けの子育て支援モバイルサービスで、子育て中のお母さんに対し、無料で予防接種のスケジュールを作成し、メールで知らせてくれるアプリケーションです。IDとパスワードを登録すれば家族と共有も可能。我々のクライアントは地方自治体です。その地方自治体に住むお母さんたちが無料でシステムを利用できます。子育て支援モバイルサービスの立ち上げに尽力したのは斎藤さんという女性なのですが、現在、第三子を出産し育休中です。2016年3月時点で7自治体でこのサービスが稼働しており、問い合わせも100件近くきています。さまざまな経験を持つ人が集まることで、しなやか強みを持った組織となり、多様なビジネスモデルが生まれていく。女性の力に今後も期待しています。

インタビューアー/麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、取材・文/西尾英子
日経ビジネスオンライン2016年5月6日の掲載記事を転載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。


女性活躍推進法や女性活躍推進のために企業がすべきことをわかりやすく解説。2015年版「日経WOMAN女性が活躍する会社ベスト100」の各業界トップの20社の戦略と詳細な人事施策も紹介している「女性活躍の教科書」(麓幸子・日経ヒット総合研究所編/日経BP社)